固形水彩絵の具は、コンパクトで軽量なのに発色が良く、屋外でもすぐに描き始められる手軽さから、初心者から愛好家まで幅広く選ばれている画材です。
とはいえ「チューブ水彩と何が違うの?」「どんな道具を揃えればいいの?」「どうやって色を作ればきれいに仕上がるの?」と、最初の一歩でつまずいてしまう方も少なくありません。
この記事では、固形水彩絵の具の基本的な特徴から、道具の選び方、実際の塗り方の手順、初心者がつまずきやすいポイントまで、順を追って詳しくご紹介します。
読み終える頃には、固形水彩絵の具を手に取って、今日からでも描き始められる状態になっているはずです。
僕自身、永く水彩画を描き続けてきましたが、道具の扱い方ひとつで絵の仕上がりは大きく変わります。
ぜひ最後まで読んで、あなたの水彩画ライフの参考にしてください。
固形水彩絵の具とはどんな画材か
この章では、固形水彩絵の具がどんな画材で、チューブタイプと比べて何が違うのかを具体的にお伝えします。
固形水彩絵の具は、半乾きの状態で固形にしているパンタイプと、絵具を乾燥させて粉状にしてからプレスして固めたケーキタイプの2種類があります。
パレットに水を含ませた筆をあて、絵の具の表面を溶かしながら色を取り出して使います。
チューブタイプのように出しすぎて無駄にする心配が少なく、必要な分だけ都度溶かして使えるのが特徴です。
チューブ水彩との違い
チューブ水彩は、あらかじめパレットに絵の具を出しておき、乾いたら再び水で戻して使うのが一般的な使い方です。
☟チューブ絵の具の例(ホルベインの絵の具をパレットに入れています)

一方で固形水彩絵の具は、絵の具そのものが乾いた状態でパレットに固定されているため、出しっぱなしにしても保管の手間がかかりません。
携帯性に優れている点も大きな違いで、屋外でのスケッチや旅先での写生に向いています。
色数が多いセットも豆皿のように並んでいるため、色を選びやすいというメリットもあります。
☟固形絵の具の例(コットマンのパンタイプ)

☟固形絵の具の例(ホルベインのケーキタイプ)


固形水彩のメリットとデメリット
固形水彩絵の具の一番のメリットは、持ち運びやすさと乾燥後の扱いやすさです。
絵の具が乾いても粉状になったり劣化したりしにくく、長期間繰り返し使えます。
一方でデメリットもあります。
色を大量に溶くには時間がかかるため、広い面を一気に塗りたいときにはチューブ水彩よりも手間がかかります。
これをカバーするために、描く直前に霧吹き(ミスト)でパレット全体に水スプレーしておくか、使う色にスポイトで1滴ずつ水を落としておくのが、プロも行う大切なテクニックです。
これは、チューブ式の絵の具を置いたパレットでも描く前には同じことをします。
固形水彩絵の具を使う前に揃えたい道具
ここでは、固形水彩絵の具と併せて用意しておきたい道具を、選び方のポイントと共に紹介します。
道具選びを誤ると、せっかくの絵の具の発色を活かしきれないこともあるため、最初にしっかり押さえておきましょう。
筆・パレット・紙の選び方
筆は、丸筆を1本、できれば大小2サイズ持っておくと、広い面と細部の両方に対応できます。
パレットは、固形絵の具のケースが兼ねているものが多いので、別途パレットを買う必要はありません。
紙は水彩用紙を選びましょう。
普通のコピー用紙や学童用の画用紙など薄手の紙では水を含んだときによれてしまい、絵の具の発色も本来の力を発揮できません。
少なくとも厚み200g/m²以上のものを選ぶと、波打ちにくく描きやすくなります。
水彩紙の選び方についてはこちらの記事で詳しく説明しています。☞『水彩紙の選び方』
また、廉価な紙を使いたい方は100均の水彩紙の説明もこちらにあります。☞『100均水彩紙』
水入れとその他あると便利な道具
水入れは、ペットボトルを切ったものでも代用できますが、水を入れる部分が少なくとも2つ以上に仕切られているものを購入しましょう。
筆を洗うところと、綺麗な水用に分けて使うと、色が濁りにくくなります。
そのほか、下描きするための鉛筆と練り消しゴム、筆の水分や固形水彩絵の具の表面の汚れを拭き取るためのティッシュや布などがあると、作業がスムーズになります。
固形水彩絵の具の基本的な使い方(手順解説)
この章では、固形水彩絵の具を使って実際に絵を描く手順を、5つのステップに分けて具体的に説明します。
初めて固形水彩絵の具に触れる方でも、この順番どおりに進めれば迷わず描き進められます。
STEP2 色を作って色を把握する
STEP3 薄い色から塗り始める(下塗りなど)
STEP4 重ね塗りで陰影を作る
STEP5 細部を仕上げる
STEP1 絵の具を水で溶く
まず、筆に水を含ませ、使いたい色の表面に軽く筆を押し当てます。
すると、すぐに絵の具の表面が溶け始めるので、筆をくるくると回しながら色を取り出します。
濃い色を作りたいときは、水の量を減らして絵の具をしっかり溶かすことがポイントです。
ある色を多めに作りたい時は、この「色をとりだす作業」を繰り返し行い、絵の具とパレットの混色スペースの間を往き来して量を増やします。
STEP2 色を作って色を把握する
固形水彩絵の具を使い始めたら、色目のチェックをおすすめします。
パレットに並んだ色は、乾いた状態と溶かした状態で見え方が異なるため、実際に紙に塗って確認しておくと本番で迷いません。
少し手間ですが、色見本を作っておくと間違いがありません。
色名と一緒に濃淡のグラデーションも作っておくと、後で色を選ぶときの参考になります。

STEP3 薄い色から塗り始める(下塗り)
水彩画は、薄い色から濃い色へと重ねていくのが基本の考え方です。
透明水彩絵の具は、最初から濃い色を塗ってしまうと、後から明るい色を足すことができません。
全体の明るい部分から色を置いていき、画面全体のバランスを見ながら進めましょう。
STEP4 重ね塗りで陰影を作る
下塗りが乾いたら、影になる部分に少し濃い色を重ねていきます。
このとき、下の色が完全に乾いてから重ねることが大切です。
STEP5 細部を仕上げる
最後に、輪郭線や質感など、細かい部分を描き込んでいきます。
細い筆に持ち替えて、水の量を少なめにすると、線がにじまずくっきりと表現できます。
固形水彩絵の具ならではの表現テクニック
ここでは、固形水彩絵の具の特性を活かした、水彩画らしい表現方法を紹介します。
これらのテクニックを覚えると、単に色を塗るだけでなく、固形水彩画ならではの柔らかさや透明感を作品に取り入れられるようになります。
にじみ・ぼかしを活かす
固形式・チューブ式を問わず、水彩画の魅力のひとつが、絵の具同士がにじみ合う偶然の効果です。
紙が湿っている状態で別の色を置くと、色同士が自然に混ざり合い、柔らかいグラデーションが生まれます。
意図的ににじみを作りたいときは、先に紙全体を水で軽く湿らせてから色を置く「ウェット・オン・ウェット」という技法が使われます。
マスキングで白を残す技法
これも固形式・チューブ式を問わず言えることですが、白く残したい部分がある場合は、マスキング液やマスキングテープを使う方法が効果的です。
塗りたくない部分に先にマスキング液を塗っておき、乾いてから周りに色を塗ります。
全体が乾いた後にマスキングを剥がすと、紙の白がそのまま残り、光や反射などを表現できます。
陰の部分は色を濃く載せていけば良いですが、光の部分は紙の白を残すことでつくります。透明感を出すためです。
そのための技法としてマスキングや塗り残しを使います。

濃淡のグラデーションを1つの筆の中で作る(サイドローディング)
固形絵の具は、表面に含ませる水の量によって、取れる絵の具の濃度が劇的に変わります。
固形絵の具を濡れた平筆(オーバル筆やアンギュラー筆でも可)の穂の片側の角でタッチし、穂のもう片側の角は色を付けない状態に保ちます。
つまり、筆の穂の両角で絵の具が付いた部分と絵の具が付いてない部分を同時に作ります。
この筆をパレットの上の同じ場所でスライドさせて馴染ませます。
こうすることで、角についた絵の具が筆の中央に向かってじわっと滲み、「濃い色 ➔ 薄い色 ➔ 透明(水)」という綺麗な階調が1本の筆の中に作られます。
この筆で塗ると、一筆の中に筆の幅方向に濃淡のグラデーションを作って描くことができます。
塗るときは、何度も同じ場所を往復して描くと、紙の上で水と絵の具が完全に混ざってしまい、サイドローディング特有のグラデーションが消えてしまいます。
1ストロークで決めるのが理想です。



二色のグラデーションを1つの固形絵の具の中で作る(ダブルローディング)
サイドローディングを応用したダブルローディングという技法もあります。
1色目の固形絵の具を濡れた平筆(オーバル筆やアンギュラー筆でも可)の穂の片側の角でタッチし、次に筆をひっくり返し、もう片側の角に2色目の固形水彩を取ります。
この筆をパレットの上の同じ場所でスライドさせて馴染ませます。
これで2色の境界線が自然に混ざり合い、グラデーションが筆の上にできあがります。
この筆で塗ると、一筆の中に筆の幅方向に二色のグラデーションを作って描くことができます。
サイドローディングと同じく、塗るときに何度も同じ場所を往復して描くと、紙の上で水と絵の具が完全に混ざってしまい、ダブルローディング特有のグラデーションが消えてしまいます。
やはり、1ストロークで決めるのが理想です。





常に一定の「淡い透明感」をキープする(ウォッシュ技法)
チューブ式は絵の具が柔らかいため、どうしても一回に筆に付く量が多くなり、色が濃くなりすぎてしまいがちです。
固形水彩は「少しずつしか溶け出さない」という制限を逆に利用します。
あらかじめ固形の上に数滴の水を落としておき(ウェッティング)、そこから「薄く均一な色水」を何度も安定して吸い上げることができます。
これにより、透明水彩の基本である「紙の白さを活かした、濁りのない均一な平塗り(平ウォッシュ)」が失敗なく行えます。
多色を少しずつ使う「ドット・点描」と「手元での混色」
固形式の最大の強みは、すべての色がパレット上にコンパクトに並んでおり、隣の色へ一瞬でアクセスできる点です。
イラストの背景や影に、様々な色を少しずつ複雑に混ぜたい時、パレットで混ぜるのではなく、固形から直接、数色のピグメントを筆先でチョンチョンと拾い、紙の上で出会わせる(ウェット・イン・ウェット)手法が非常にスムーズに行えます。
チューブのように「出しすぎる」心配がないため、感覚的な色選びが可能です。
ドライブラシ(擦れ・かすれ)の表現
乾いた筆に、少しだけ湿らせた固形絵の具を直接こすりつけます。
チューブ式のように水分を含んだ生の絵の具ではないため、「水分量は極小、だけど顔料の濃度は高い」という絶妙な状態を簡単に作れます。
これを画用紙の凹凸(粗目など)に滑らせることで、木の幹や岩の質感、波しぶきのような「かすれ(ドライブラシ)」をピンポイントで表現しやすくなります。
初心者が固形水彩絵の具でつまずきやすいポイント
この章では、固形水彩絵の具を使い始めたときに多くの方がつまずくポイントと、その対処法を具体的に解説します。
事前に知っておくことで、失敗を未然に防げます。
色が濁ってしまう原因
色が濁ってしまう一番の原因は、パレット上で複数の色を混ぜすぎることです。
3色以上を混ぜると、絵の具に含まれる顔料同士が打ち消し合い、くすんだ色になりやすくなります。
また、筆を洗う水が汚れたまま使い続けることも濁りの原因になります。
水はこまめに交換することが大切です。
紙がヨレる・破れるときの対処法
水を多く含ませすぎると、紙が波打ったり、表面が傷んだりすることがあります。
これを防ぐには、水彩紙を水張りしてから描く方法が有効です。
厚みのある紙を使う、または最初から水張りされたブロックタイプの水彩紙を選ぶことでも、このトラブルを防ぐことができます。
前出の『水彩紙の選び方』がとても参考になります。
水張りについては、こちらの記事の動画で説明しています。☞『水張りの方法』
固形水彩絵の具の選び方とおすすめの色数
ここでは、これから固形水彩絵の具を購入する方に向けて、色数の選び方と、買い足すときのポイントを紹介します。
セット色数の選び方(12色〜48色)
初心者の方には、まず12色〜24色程度のセットから始めることをおすすめします。
色数が少なくても、混色の練習をすることでさまざまな色を作り出せるようになります。
色数が多いセットは、パールカラーや蛍光色など個性的な色も含まれていることが多く、表現の幅を広げたい中級者以降の方に向いています。
単色買い足しのコツ
セットに使い慣れてきたら、よく使う色から単色で買い足していく方法がおすすめです。
固形水彩絵の具は多くのメーカーで単色販売されているため、パレットの空いた部分に好きな色を追加できます。

まとめ|固形水彩絵の具の使い方をマスターして絵を楽しもう
道具を正しく揃え、薄い色から重ねていく基本の手順を守ることで、初心者の方でも美しい水彩表現を楽しめます。
にじみやマスキングといった技法を取り入れれば、表現の幅もさらに広がります。
最初はうまくいかないことがあっても、色見本を作りながら少しずつ慣れていけば、必ず自分らしい描き方が見つかります。
固形絵の具は、コンパクトに作られたケースの中に絵の具とパレットが一体になっているものが多いです。
なので、チューブ絵の具+パレットに比べて、コンパクトで軽量で持ち運びに便利です。
よくある質問(FAQ)
Q. 固形水彩絵の具とチューブ水彩、初心者にはどちらがおすすめですか?
A. 持ち運びやすさや管理のしやすさを重視するなら固形水彩絵の具がおすすめです。広い面を一気に塗ることが多い方にはチューブ水彩が向いています。
Q. 固形水彩絵の具はどのくらい長持ちしますか?
A. 乾燥した状態で保管されているため、劣化しにくく、正しく保管すれば長期間使い続けられます。
Q. 固形水彩絵の具に向いている紙はありますか?
A. 200g/m²以上の厚みがある水彩用紙が向いています。薄い紙は水を含むとヨレやすいため注意が必要です。
Q. マスキング液はどこで使うのが効果的ですか?
A. 光や反射、細い線など、後から白く残したい部分に使うと効果的です。乾いてから周りを塗り、全体が乾燥した後に剥がします。
コンパクトで軽量で持ち運びに便利な固形絵の具と水筆とスケッチブックさえあれば、旅先でのスケッチなども気軽に楽しめますよ。
是非、お試しください。
では、、、また。









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こんにちは 心象水彩画家のBakkyです 水彩画 たのしんでますか?