風景画を描こうとして、紙を前にしたまま手が止まってしまう。
そんな経験はありませんか。
「風景画はどこから描き始めればいいのか」という悩みは、実は多くの初心者が最初にぶつかる壁です。実は僕も以前はそうでした。
この記事では、風景画を描く順番の基本から、構図の決め方、下描きから着彩までの具体的な手順までを解説します。
さらに、永く水彩画を描き続けてきた僕自身の経験もあわせてお伝えします。
読み終える頃には、目の前の風景に対して「どこから手をつければいいか」が自分の中ではっきりするはずです。
風景画はどこから描き始めればいいのか、まず結論から
風景画に取り組むとき、多くの人が最初に手が止まる瞬間があります。
それは「画面のどこから描き始めるか」を決めかねる瞬間です。
まず、なぜここでつまずいてしまうのかを整理し、その上で結論をお伝えします。
多くの人が最初につまずくポイント
風景には空・山・木・建物・水面など、たくさんの要素が同時に存在しています。
情報量が多いため、どこに手をつければいいのか分からなくなってしまうのです。
さらに、「全部を同じくらい丁寧に描かなければ」という思い込みが、手を止める原因になっていることも少なくありません。
風景画は、要素すべてを均等に描く絵ではありません。
結論:主役を決めてから全体の順番を組み立てる
風景画をどこから描くかで迷ったときの答えはシンプルです。
まず「その風景の中で一番描きたいもの(主役)」を決めることから始めます。
主役が決まれば、構図の中心が決まり、そこから空、遠景、中景、近景という順番で全体を組み立てていくことができます。
つまり「どこから描くか」は、絵の中の場所の問題である以前に、「何を描きたいか」の問題なのです。

☟例えば、この絵では石の上に落ちた花を主役にしています。それを中心に構図を作り、脇役を「抑えた塗り方」にしています。

描き始める前に知っておきたい風景画の全体の流れ
この章では、風景を選ぶところから着彩を終えるまでの一連の流れを、実際の手順に沿って踏み込んで解説します。
全体の流れを先に頭に入れておくと、途中で迷いにくくなります。
Step1:描きたい風景(モチーフ)を選ぶ
最初のステップは、描く対象となる風景を選ぶことです。
写真を参考にする場合も、実際に外で描く場合も、まずは「なぜこの風景を描きたいのか」を自分に問いかけながら選んでみましょう。
理由がはっきりしている風景ほど、主役が定まりやすくなります。
Step2:構図とアイレベルを決める
風景を選んだら、次に紙の中にどう配置するかという構図と、目線の高さであるアイレベルを決めます。
この段階を飛ばして下描きに進むと、後から「バランスが悪い」と感じて描き直すことになりがちです。
構図とアイレベルについては、次の章で詳しく解説します。
Step3:下書き(大まかな配置)を描く
構図が決まったら、鉛筆で大まかな配置を下描きします。
ここではまだ細部を描き込まず、空・遠景・中景・近景の境界線程度を軽く取っておく段階です。
Step4:遠くから近くへ、または空から順に着彩する
下描きができたら、着彩に入ります。
基本の順番は、奥にあるもの(空や遠景)から手前にあるもの(近景)へ、あるいは明るい(薄い)色から暗い(濃い)色へと進めていく流れです。
これは、後から塗る手前の色が奥の色を隠すことで、絵に自然な奥行きが生まれるためです。
透明水彩絵の具は、濃い色を塗った後に薄い色を塗っても濃い色を隠しきれないからでもあります。
- 描きたい風景(モチーフ)を選ぶ
- 構図とアイレベルを決める
- 下描き(大まかな配置)を描く
- 遠くから近くへ、または明るい色から暗い色へ着彩する
☟対象の風景

☟下描き

☟まずは遠くの明るい色を塗ります

☟だんだんと近くの濃い色を塗ります(近くは形もしっかりと)

どこから描くかを左右する「構図」の考え方
風景画を描く順番を決める上で、避けて通れないのが構図の考え方です。
ここでは、構図を構成する要素と、奥行きを出すための考え方を整理します。
構図とは何か
構図とは、紙という限られた空間の中に、風景のどの部分を、どんな大きさで、どこに配置するかを決めることです。
同じ風景を見ていても、構図の決め方次第で、まったく印象の異なる絵になります。
風景画を構成する要素(空・遠景・中景・近景)
風景画は、大きく分けて空・遠景・中景・近景という層で構成されています。
それぞれの層をどのくらいの割合で紙に配置するかによって、絵全体の印象が大きく変わります。
例えば空を大きく取れば開放感のある絵になり、近景を大きく取れば近景の中の主役がより際立つ絵になります。
アイレベルの決め方
アイレベルとは、描き手の目の高さのことです。
アイレベルを紙のどこに設定するかによって、見下ろす構図にするか、見上げる構図にするかが決まります。
このアイレベルは、構図全体の基準線になるため、下描きの前に必ず決めておく必要があります。
アイレベルは、基本的には「自分がその風景をどの高さから見ているか」を基準に決めます。
アイレベルは、絵の中で必ずしも「地平線」と一致するわけではありません。
ただし、風景の中に水平な面がある場合は、それを手掛かりにできます。
・遠くの海の水平線 → アイレベルを直接判断しやすい
・湖の水平線 → 判断しやすい
・道路・田んぼ・建物の水平な線 → アイレベルを推測する手掛かり
・山や樹木 → それ自体には水平線がないので、別の手掛かりが必要
また、重要なのが「水平な線がどこで消えていくか」です。
たとえば地平線に向かってまっすぐ延びる道路を描く場合、道路の両端の線を遠くへ伸ばしていくと、やがて一点付近に集まっていきます。この消失点の高さがおおむねアイレベルになります。
実際の風景で考えると分かりやすいです。
同じ場所でも、立って見るとアイレベルが高くなりますし、座って見るとアイレベルが低くなります。
つまり、「この風景を自分はどの高さから見ているのだろう?」と考えると、アイレベルを決めやすくなります。
写真や実景を見ながら、まず「この絵では、目線をこの高さに置こう」と決めます。
そして紙の上に薄く仮の水平線を引きます。
そのうえで、空をどれくらい見せるか、地面をどれくらい見せるか、山の位置、建物の高さ、道や川の流れ、などを決めていきます。
そして、これは「構図に迷ったとき」に非常に役立ちます。
構図に迷ったら、① どこから見ているのか?② 目線の高さはどこか?③ 空を主役にするのか、地面を主役にするのか?の3つを考えてみる。
すると、単に「山を上にするか下にするか」「道をどこに置くか」と悩むより、構図を整理しやすくなります。
特に風景画では、アイレベルを変えるだけで同じ場所でも絵の印象がかなり変わります。
パースを意識した奥行きの出し方
パース(遠近法)とは、遠くのものほど小さく、近くのものほど大きく見えるという視覚のルールを絵に反映させる考え方です。
道や川、建物の輪郭にパースを意識するだけで、平面的だった風景に奥行きが生まれます。

実際に描く順番(下書き〜着彩の手順)
ここでは、下描きから着彩までを、より具体的な手順に落とし込んで解説します。
下書きは大きな形から、細部は最後
下描きの段階では、木の一枚一枚の葉や、建物の細かい模様を描き込む必要はありません。
まずは空・遠景・中景・近景の大きな塊としての形を取り、細部は着彩が進んだ後の最終段階で加えていきます。
色を塗る順番の基本(奥から手前へ)
着彩は、基本的に奥にあるものから手前にあるものへと進めます。
空を塗り、遠景の山や建物を塗り、中景、近景という順番です。
この順番を守ることで、色の重なりが自然な奥行きを生み出します。
にじみ・ぼかしを使う場面
水彩画では、色と色の境目を柔らかく見せたい場面で、にじみやぼかしの技法を使います。
特に空や遠景など、輪郭をくっきりさせたくない部分に向いている技法です。
☟この絵では、遠方の木と近くの茂みの形のシャープさに差をつけ遠近感をだしてします。

初心者が「どこから描くか」で迷わないための画材の選び方
道具選びも、どこから描くかという迷いを減らす助けになります。
ここでは、初心者が最初に揃えておきたい画材の基本を紹介します。
水彩画に向く紙・絵の具の基本
水彩画では、水を含んでもよれにくい水彩紙を選ぶことが基本です。
薄い紙を使うと、にじみやぼかしを行った際に紙自体が波打ってしまい、思うような表現がしにくくなります。
最初の一枚におすすめの構成
最初の一枚は、あまり複雑な風景を選ばず、空・遠景・近景がはっきり分かれているシンプルな構図から始めることをおすすめします。
要素が整理された風景ほど、どこから描くかという手順を体で覚えやすくなるからです。

僕が水彩画を描くときに大切にしていること
ここからは、永く水彩画を描いてきた僕自身の考え方についてお伝えします。
主役を決めてから描き始める理由
僕自身、風景画を描くときは必ず「何を一番見せたいか」を最初に決めます。
このとき考えることは、自分がその絵で「何を言いたいか」「何を表現したいか」です。
ちょっと意外に思えるかもしれませんが、これらを紙に書き出しておきます。
自分の表現したいことを文字にすることで、自分が描くことにブレをなくすのです。
なんだか小難しいことを言っているように聞こえるかもしれませんが、絵は描き手の考えを表現する手段なので、描き手の想いが絵に反映されていきます。
なんとなく描いても絵にはなりますが、この「考え」がハッキリしてないと、描き上がったあとで「これは何?」となりがちです。
自分の表現したいことを文字にすると、こういうことを防ぐことができます。
僕はこのことを大切にしています。

構図に迷ったときの僕なりの向き合い方
構図に迷うことは、永く描いてきた今でもあります。
風景画を描いていると、「この風景をどう画面に収めようかな?」と迷うことがあります。
空を広くしたほうがいいのか、山を大きくしたほうがいいのか。
木は全部入れるのか、一部だけにするのか。
写真を見ていると、どこも魅力的に見えてしまって、なかなか決められないこともあります。
そんなとき、僕がまず考えるのは、「この風景のどこに自分が惹かれたのか」ということです。
光なのか、空の広がりなのか、木々の重なりなのか、それとも遠くに見える山なのか。
それがハッキリすると、「全部を描かなくてもいい」ということに思いが至るようになります。
風景にはたくさんの情報がありますが、絵では、その中から自分が感じたものだけを選んでいいんです。
むしろ思い切って省いたほうが、描きたかった雰囲気が伝わることもあります。
それでも迷うときは、鉛筆でラフな下描きをいくつか作ってみます。
空を多くした構図、木を大きくした構図、主役を少し横にずらした構図……。
細かく描く必要はありません。
ラフな画面で全体のバランスを見るだけでも、「こっちのほうが自分らしいな」と感じることがあります。
僕の場合、最終的には構図の理論だけで決めるのではなく、「この景色を見たときに感じたものが、一番残るのはどの構図だろう」と考えます。
三分割法や対角線などの「典型的構図」を参考にすることもありますが、それらは迷ったときに考えるための手がかりにしています。
今でも、風景画を描く前には必ず迷います。でも、迷うこと自体は悪いことではないと思っています。
「何を描こうか」と迷うということは、それだけその風景の中に心を惹かれるものがあるということ。
迷ったときは、全部を入れようとせず、「自分はこの風景の何に心を動かされたのか」を考え「引き算」で考えてみる。それが、今の僕なりの構図との向き合い方です。

まとめ|風景画はどこから描くかより「何を描きたいか」から始める
風景画をどこから描くかという問いに対する答えは、技術的な手順である以前に、「何を主役にするか」を決めることに尽きます。
主役が決まれば、構図・アイレベル・着彩の順番は自然と後からついてきます。
僕自身も、思い通りに描けるようになった今でも、これを考えながら描くことに変わりはありません。

よくある質問(FAQ)
風景画は空から塗るべきですか?
基本的には空から塗る方法が扱いやすいといえます。
奥にある明るい空を先に塗ることで、後から手前の要素を重ねても奥行きが崩れにくいためです。
下書きは鉛筆と絵の具どちらが先ですか?
一般的には、鉛筆で大まかな配置を下描きしてから、絵の具で着彩する順番になります。
鉛筆の線は、構図のガイドとしての役割を果たします。
初心者はどんな風景を選べばいいですか?
空・遠景・近景がはっきり分かれた、要素の少ないシンプルな風景から始めることをおすすめします。
複雑な風景は、どこから描くかという判断そのものが難しくなってしまうためです。
では、、、また。





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こんにちは 心象水彩画家のBakkyです 水彩画 たのしんでますか?