【透明水彩】モンサンミッシェルの描き方!感情を映す表現のコツ

Bakky
こんにちは、水彩画家のBakkyです。水彩画たのしんでますか?

フランスの有名な世界遺産、モンサンミッシェルを水彩画で魅力的に描いてみたいと思ったことはありませんか?
「建物が複雑で難しそう」「写真があるなら、そっくりに描くだけで良いのでは?」と初めから諦めてしまうのはもったいないです。

なにも、写真そっくりにリアルに描くだけが水彩画の魅力ではありません。
実在の景色から少し離れて、あなたの感情(エモーション)を絵に投影することで、見る人の心を揺さぶるドラマチックな作品が生まれるのです。

この記事では、透明水彩でモンサンミッシェルをドラマチックかつエモーショナルに描く手順を、実際の制作動画付きで初心者向けに優しく解説します。
独自の感性を活かした具体的なステップとコツを詳しく紐解いていきましょう。

この記事で学べること
・形にとらわれず自分だけの世界観を表現する水彩画の描き方
・「垂らし込み」技法を活かした光と影の表現テクニック
・実在から離れたドラマチックな色選びのコツ

最後まで読めば、形にとらわれず、あなただけの世界観を表現する水彩画の描き方がしっかりとマスターできますよ。

水彩画で描くモンサンミッシェル!エモーショナルな表現の魅力

実在の景色をそのまま100%再現しようとすると、どうしても技術的な正確さばかりに意識が向いてしまいます。

しかし、水彩画の本質的な楽しさは、写真そっくりの絵を描くことではなく、その場所で自分が感じた空気感や心の動きを画面に映し出すことにあります。

モンサンミッシェルという歴史的で神秘的なモチーフだからこそ、あえて実在の色や形にとらわれないアプローチが効果的です。
あなたの「感情」を色の濃淡や筆使いに託すことで、写真には写らない唯一無二のドラマチックな世界観を表現できるようになります。

なぜ「実在通り」ではなくエモーショナルに描くのか?

実は、僕が今回この題材を描いたのは、絵の関係の知人から勧められたのがきっかけでした。

その際にモンサンミッシェルが映った一枚の写真を手渡されたのです。

それは昼間に撮影された一般的な観光ガイドに掲載されているような写真でした(下の写真)。
写真をそのまま描くことは簡単ですが、それでは「自分の絵」にならないような気がしたのです。

僕はいつも「心象風景が描きたい」と思って筆を執っています。
絵の中に、何かストーリー的なものを織り込みたいと考えて制作しているからです。

絵に感情を吹き込むために必要な準備と心構え

そこで、まずはモンサンミッシェルの背景にある歴史をネットで少し調べてみました。

すると、この島は元々ケルト人の信仰する場所であったこと、中世になって大天使ミカエルのお告げを受けた司教が聖堂を建てたこと、そして何世紀にも亘ってカトリックの聖地になったことを知ったのです。

この由来を知ったうえでイメージを膨らませたとき、僕の脳裏にある光景が浮かびました。
それは、暗闇のなかに天上から光の柱が落ちてきて、聖堂を神々しく照らす光景です。

「上手に描こう」「失敗してはいけない」というプレッシャーは一度捨てましょう。
このようにモチーフの物語に思いを馳せ、心が動くままにイメージを膨らませることが、絵に感情を吹き込む最高の準備になります。

モンサンミッシェルをドラマチックに描く水彩画の描き方5ステップ

ここからは、実際に僕がモンサンミッシェルを描いている経過を動画を交えて解説していきます。

ステップ毎に手順を進めていきますので、初心者の方でも分かりやすい内容です。

動画内では、夜の闇の部分を追加したり、水面への映り込みを調整したりと、試行錯誤しながら制作しているリアルな様子も収められています。
「絵と対話しながら」紡ぎ出されていくエモーショナルな表現を、ぜひ動画とともに体感してみてください。

ステップ1:全体の構図とエモーショナルな下絵のポイント

まずは画面全体の構図を決め、鉛筆で下絵(デッサン)を描いていきます。

モンサンミッシェルのシルエットを大まかにつかむことが大切ですが、細部をすべて細かく描き込みすぎる必要はありません。

建物の正確な形を追うよりも、そびえ立つ孤島の「力強さ」や「神秘的な佇まい」といった全体の印象を意識して線を引いてみましょう。
モンサンミッシェルをパッと見て最も印象的なのは、中央の尖塔と空との境目にある「スカイライン」ですので、そこはしっかりと下描きをしました。

下描きが終わったら、窓の部分にだけマスキングをしておきます。
今回は神秘的な夜をイメージしているため、後からあたたかい灯りが灯る窓を表現したいからです。

ステップ2:光と影を意識したファーストウォッシュ(背景)

下絵が終わったら、いよいよ着色です。

まずは画面全体(特に背景の空や水面)に薄い絵の具を広げるファーストウォッシュを行います。

今回は、僕が脳裏に描いた「天上から落ちてくる光の柱」を表現するために、水彩画の「垂らし込み」という技法を使いました。
紙の白を神々しい光に見せるためには周囲を暗くする必要があり、光と陰の境界の表現方法にも工夫が必要です。

具体的な手順としては、まず紙全体にたっぷりの水を塗ります。
そして陰の部分に、濃い青だけでなく紫色や黄色も一緒に垂らし、筆を使わずに紙の上で広げていくのです。

垂らし込みのコツ
紙を上下左右に傾けて絵の具同士を混ぜつつ、天地方向に美しい筋となるように広げていきます。絵の具は画面からこぼれ落ちますが、できるだけ落とさずに画面の上で泳がせ続けるのがコツです。

これは紙が乾いて絵の具が動かなくなるまでが勝負の技法で、ある種の「成り行き的」な偶然性を楽しむ技法でもあります。
実は、今回の垂らし込みも僕の当初のイメージとは若干ズレて、上の方が少し広がってしまいました(苦笑)。

しかし、それこそが水彩画独特の「偶然性」であり、筆で塗る方法では決して出せない豊かなテイストになります。それも含めて楽しむのがコツです。

ステップ3:モンサンミッシェルのシルエットと陰影的描き込み

背景が完全に乾いたら、主役であるモンサンミッシェルの建物を描き込んでいきます。

ここでも細かな建物の形や壁の質感を1つずつ追うのではない、大きな「シルエット(影の塊)」として捉えるのがコツです。

まずは壁全体を、ベースとなるベージュ色で塗っておきます。このとき、ベタっと塗るのではなく、あえてムラになるように塗るとよいでしょう。
そのあと、光が当たっている部分と暗く影になっている部分の境界線を意識しながら、陰影を付けていきましょう。

すべての部分を下描きの線通りにきっちり収めるのではなく、ある程度「はみ出しながら」塗る方が、絵に勢いと情緒が生まれます。
また、上から光が降り注いでいるストーリーを意識して、建物も木々も下に行くほど暗くなるように明暗をつけていくのがポイントです。

ステップ4:実在から離れた独自の「色目」で感情を表現する

ここがエモーショナルな水彩画において、最も楽しく、かつ重要なステップです。

実際のモンサンミッシェルの石積みはグレーやベージュですが、そこに囚われる必要は一切ありません。

人間はどうしても実在の形や色に囚われがちですし、その方が安心できます。
しかし、実在をただ紙の上に写し取っただけでは、観た人に「ああ、上手だね」と思われて終わってしまう絵になりがちです。

実在から離れた独自の「色目」を使うことで、観る人をハッと唸らせる絵になりやすくなります。
簡単な方法としては、画面の中に少し「補色」を取り入れてあげることです。

ちなみに、今回の僕の絵では建物自体には補色をほとんど使っていません(あえて言えば尖塔や屋根の紫色くらいです)。
なぜなら、最も印象付けたかったのが「光の柱」だからです。

この光の中にモンサンミッシェルの姿がぼんやりと浮かび上がれば良いと考え、光の当たる部分に実在にはない「黄・橙・紫」といったドラマチックな色を響かせました。

ステップ5:ドラマチックな仕上げとディテールの調整

最後のステップとして、作品全体のバランスを見ながら、仕上げの調整を行います。

僕が描く心象風景には、いつも「光」を入れたいと思っています。

光をより引き立てて感じさせるための鉄則は、「暗いところをより暗く引き締める」ことです。
この作品においては光の柱が中心となるため、周囲の暗闇の部分をさらに深く描き込みしました。

また、モンサンミッシェルの姿はあえてクッキリと描きすぎず、所々を優しくぼやかしています。
手前に伸びる浅瀬の描写も同様にぼかすことで、画面全体にドラマチックな躍動感と奥行きを与えて完成です。

エモーショナルな水彩画を失敗せずに描くための注意点

エモーショナルな水彩画は、絵をそこそこ続けてきた人にとっては「いつかは描いてみたい憧れの表現」だと思います。

しかし、エモーションを求めるあまり、単に「奇をてらう」ような描き方になってしまうと、観ている人に違和感を与えるだけの絵になってしまう危険があります。

失敗を防ぐための最大のアドバイスは、「画面全体をエモーショナルにしようとしないこと」です。
画面の中のどこか一部に強い想いを込めて描く、という意識を持ってみてください。

それは、一部の細密な描き込みでも良いですし、ワンポイントのパッとした鮮やかな色でも構いません。
主役となる見せ場を絞ることが、作品を破綻させずに成功させるコツです。

色が濁るのを恐れない!混色と重ね塗り

水彩画は色を重ねていくほど、絵の具の性質上どうしても色が濁っていきます。

しかし、エモーショナルな絵にするためには、必ずしも明度や彩度を高くして鮮やかにする必要はありません。

鮮やかさが抑えられた、渋く落ち着いた色調のなかにも、素晴らしいエモーショナルな絵はたくさん存在します。
要は「作者の想いがどれだけ画面上に現れているか」が何よりも大切なのです。

そのためには、色を濁らせることを恐れない方が、むしろ良い結果に繋がることがあります。
故意に画面を濁らせたり汚したりすることで、観ている人の心に強い印象やノスタルジーを植え付けるのも、立派な表現技法の一つです。

描き込みすぎに注意!あえて「描き残す」勇気を持つ

絵をドラマチックに仕上げるためには、すべてをきっちり描き切らない「余白」や「ラフさ」が重要な役割を果たします。

どこもかしこも細かく描き込んでしまうと、見る人の想像力が働く余地がなくなってしまうからです。

「描き込みすぎ」を防ぎ、水彩ならではの自然な美しさを残すためには、画面の一部に「絵の具が消えて抜けていくような箇所」を作るのがおすすめです。
また、何が描いてあるか分からないけれど、何か「もやもや」っと塗られているような「未完成の箇所」を残すのも効果的です。

あえて描き残された部分を作ることで、観ている人の視線が自然とそこに誘導され、「この先には何があるのだろう」と想像力を働かせてくれるようになります。

まとめ:あなただけのモンサンミッシェルを水彩画で表現しよう

今回は、実在の景色から離れてエモーショナルに描く、モンサンミッシェルの水彩画の描き方について解説しました。
大切なのは、テクニックの正確さよりも、あなたの心が何を感じ、それをどう画面に表現したいかという情熱です。

ご紹介した制作動画を何度も見返しながら、ぜひあなただけのドラマチックなモンサンミッシェルを描いてみてください。そして、あなたの印象に残った風景や静物画を描いていてください。

Bakky
絵の具と水が織りなす偶然の美しさを楽しみながら、自由な水彩画の世界へ一歩踏み出してみましょう! では、、、また。