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はじめに|八幡堀の魅力とモチーフ選び
八幡堀の魅力は、石垣と水辺、そして季節の木々が織りなす穏やかな空間にあります。
地域内を流れるお堀は、とてもゆっくり水がながれていて、まるで池のように静かです。時々、観光遊覧船が観光客を乗せて往来しています。お堀沿いには散歩できる路地も設けられています。また桜の木が植えられていて、春には桜の見どころになります。
その八幡堀を訪れたのは昨年6月、新緑のころ。緑がまぶしい季節でした。そして木々の間から木漏れ日が水面に落ちていて、眠くなるような穏やかな日でした。
先ほども書きまたように、ここ八幡堀は絵になる風景が沢山あって、絵描きにとって人気の場所です。そこを訪れ、気に入った風景の一つを絵にしようと思った次第です。
今回のモチーフでは、左手前の大きな木と、奥に広がるお堀を軸に構図を組み立てました。
風景画では「どこを主役にするか」を明確にすることが重要です。
ここを訪れたとき、水面が眠ったように静かで淀んだ水面に木漏れ日が射し込んでいる光景がとても印象的でしたので、本作では木漏れ日と水面の静けさを主題としました。奥のほうに小舟が浮かんでいますが、この小舟を主人公にしたかったわけではなく、水面の静けさがわかる材料にしたかったのと、小舟を浮かべることで、絵にアクセントと物語性をつけたかったのです。
・奥行きを感じる構図のとりかた
・透明水彩での風景画の描き方
・光を感じる色の塗り方
下描きと構図設計(遠近感の作り方)
今回の題材は、比較的奥行きを感じる風景です。
右手前から左奥に向かってお堀が続いていて、その脇に沿って木や草や石垣が続く構図にしています。
また、左手前には画面からはみ出すように桜の木を大きく置きました。
こうすることで、画面に「押さえ」を効かせることができ、お堀の向こう側の木々と大きさの差ができ、より奥行き感をだすことができます。
そして、最後まで描き込むかどうか迷ったのですが、お堀に小舟を浮かべました。
もし小舟が無いと、少し味気ないかもと思いましたし、小舟を置くことで、絵を観る人に何か物語的なものを感じてもらえる可能性も出てきます。無論、小舟なしでも構わないのですが、僕は「絵の中に物語性を持たせたいな」と、いつも想って描いています。そのために、風景の中に人物や光や特定のモノを置いたりします。今回も、結局そういう意図で小舟を描き込みました。
光と影の設計
観ているひとに、絵の中で光をどこかに感じさせたいです。いつもそう思っています。
今回の構図では奥行き感も出したいので、画面の左奥のところに一番明るい場所を置き、紙の白を描き残すようにしました。こうして「抜け感」を出すことで、光と奥行きを狙いました。
一方で、この明るさをより強調するようには暗いところをつくるのが良いです。
このために、右手前の方と手前は暗くしましたし、木の葉の茂みの影が水面に落ちていますので、これも明るさを強調してくれます。そして左手前の桜の木もしっかり影を描きます。
明るさを感じるためには暗いところをちゃんと暗くする、というのはよく使うやり方です。
着彩の準備|使用した透明水彩と紙

ざっと絵の方針が決まりましたので、次は材料です
紙
今回もマスキングを使いますので、紙は頑丈なもの(300g/m以上のもの)を選びました。アルシュの中目です。
僕は基本的にウオーターフォードかアルシュを使っています。
なお、水彩紙については、こちらの記事で詳しく解説しています。
☞『【水彩紙 選び方】初心者が失敗しないおすすめ水彩紙を徹底比較』
絵の具
僕の使う絵の具はホルベイン製がほとんどです。一部、ウインザー&ニュートンを使っています。
色は例えば以下の通りです。
・木々の緑・・・サップグリーン、イミダゾロンレモン、トランスペアレントイエロー
・木の幹や枝(暗い部分)・・・ウルトラマリンディープ、バーントアンバー
・木の幹や枝(明るい部分)・・・キナグリドンオペラ、セルリアンブルー
・小舟・・・バーントアンバー、キナグリドンオペラ
水彩絵の具の関連記事はこちらの記事で詳しく解説しています。
☞『水彩画初心者のための絵の具|実際に使ってわかったおすすめと注意点』
筆
・刷毛(大)・・・広い面を下塗りする際、先に水を塗るのに使いました。それと広い水面に絵の具を塗るのに使いました。
・面相筆(大、小、割れ)・・・葉や草の茂みや石垣に使用しました。対象物の大きさに応じて筆の大きさも換えました。割れ筆は比較的遠景の葉の茂みに使用。
・平筆(大)・・・広い面の大まかな下塗りの着色に使用しました。
・丸筆(大)・・・比較的細かい場所の水塗りに使いました。
着色の段取り

今回の絵面は比較的に複雑なので、塗る順番に気をつけました
絵の具を塗る順番の基本的ルール
水彩画の絵の具を塗る順番には基本的なルールがあります。
・明るい色(場所)から塗ること
・遠景から塗ること(近景は後で)
・次により暗い場所や近景を塗ります
何故こうするかと言うと、失敗が少ないからです。
透明水彩画は、濃い色を塗ったあとに明るい色を塗っても濃い色が勝ってしまい、明るい色を表現するのが難しいです。反対に、明るい色を塗ったあとで、濃い色を塗るのは大丈夫です。また、色を混ぜれば混ぜるほどに色が濁っていく傾向があるので、そうすると折角の透明水彩の良い部分が毀損され残念なことになります。無論、そういう濁った色を狙って塗るのも芸術表現としてはアリなのですが、透明水彩独特の明るい色で絵を描きたいのでしたら、このルールを知っておいた方がよいでしょう。
そして、別の理由としては、遠近感を出せるからです(空気遠近法)。人は明るく薄い色は遠くに、暗く濃い色は近くに感じます。このことによって、絵の中の対象物に遠近を付けることができます。
今回の題材における着色の段取り
前述のルールに鑑みて、以下の様な段取りで塗って行きました。
①.色を塗りたくない部分にマスキングを施します。
光っている部分や、暗い背景の手前に明るい色のもの(今回の場合は木の葉や草の茂み)があり、ネガティブペインティング(塗り残し)では難しい箇所は予めマスキングしておくと着色が楽です。
②.明るい箇所で遠景の箇所を塗ります
今回の題材では、左奥へお堀が伸びているところ
③.より濃い箇所を塗ります
今回の題材では、より近い川面の薄い色をまず塗り、中景から近景にかけての緑の茂み、遠景から近景にかけての石垣、お堀の向こう側の木々の茂みです。
⑤.マスキングの周囲をある程度濃い色で塗れたらマスキングを剥がします
⑥.マスキングの跡は紙の白が残っていますので、そこに薄く着色します
⑦.より暗く濃い色の箇所に着色しつつ、画面全体の色目や明るさを調整します
★光を感じさせたいと思ってますので、この中での一番の見せ場は、手前の幹に陽が当たって光っている感じを出すことと、水面に木漏れ日を表現することです。
着色しましょう

では、絵の各部分の着色の留意点などについて、より細かく見ていきましょう
緑の表現|にじみと重ね塗り
この題材のように奥行き方向にずっと同じような要素(木の茂み)が伸びているような絵は、単調になりがちですので、それを避け、奥行き感を出すようにします。
このためには、奥と手前の色目を分けたり、モノのサイズ(木の葉の大きさや密度)を変えたり、奥側は「にじみ」を使ってぼんやりと描き、手前は細部まで描き込んだり、手前の方は重ね塗りをして色の深みを出す、といったことに留意するとよいと思います。
水面の表現|落ちた影にも遠近感を
今回の題材は淀んだ水面を描きました。水面に波もなく、とても静かです。
こういった水面は、予め水で画面を濡らしたあとに絵の具をおいて、エッジを立てないような塗り方にしたいです。
そして、そんな静かな水面には木の茂みが影を落としています。木はお堀に沿って何本も植えられていて、木の影は水面に比較的遠くの部分から手前にかけて続いていますので、木の影にも、「遠くの影」と「近くの影」とがあって、それを描き分けたいです。このためには、木の影の形や濃さに差をつけると良いです。遠くの影は筆を左右に揺らすようにして着色して潰れたような形にし、近くの影は左右に筆を左右に振らずにポンポンと紙に置くようして潰れないような描き方をすると良いです。そして、さらに欲張るなら、遠くの影の色目を薄く、近くの影の色目を濃くするとより遠近感がでます。
石垣の描写|質感の描き分け
次は石垣です。これは他のものと違って人工物であり質感が異なります。
石垣は岩のゴツゴツした感じやザラザラした感じを出したいですので、この感じをドライブラシで出します。また、ドライブラシだけだと実在感が出にくいので、先に淡い色(青系や茶系)で塗っておいて、その絵の具が乾きかけたときにドライブラシを掛けると良い感じになります。また、細部ににじみを入れるのも良いです。
幹の光|陽に照らされて光った感じ
木の幹で陽が当たっているところは、モチロン薄い色にしますが、ただ木の茶色を薄くしただけでは、今ひとつ「感じ」が出ません。木の幹の部分に水を塗っておき、紙の上に青系と赤系の絵の具を置いて、紙の上でにじんで混ざるようにすると良いです。こうすることで幹が光ります。
制作動画

ここまで解説した内容を下描きと動画にしていますのでご覧ください
下描きとマスキング
薄青い部分がマスキングしている箇所です。
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制作動画
☟これまで解説した内容をメイキング動画にしましたのでご覧ください
制作を振り返って|今回の工夫と反省点
成功した点
・木の幹が陽に照らされて光っているところは、赤系と青系の絵の具を画面の上で混ぜることができ、上手く表現できたと思います。
・お堀の奥に光が見えるところは、明度が抜けるようにうまく表現できたと思います。
改善したい点
・明るさを強調するために、手前右側の部分の明度をもっと下げた方が、より印象的な絵になったと思います。
・画面全体の緑が強いので、ほかの色を入れて色目のレンジを増やした方が良い、と反省。
まとめ|透明水彩で風景を描くコツ
今回の制作では、滋賀県近江八幡市の八幡堀をモチーフに、新緑と水面の光の表現に重点を置いて描きました。
透明水彩では、細部を描き込むこと以上に、にじみや余白を活かしながら全体の空気感を整えることが重要だと改めて感じます。
特に水面の描写や木々の表現では、色を重ねすぎず、適度に省略することで自然な印象に近づけることができました。
風景画は一度で完成させるものではなく、試行錯誤の積み重ねによって少しずつ表現が深まっていくものだと思います。
八幡堀のような穏やかな風景は、透明水彩の特性と相性が良く、光や季節感を表現する題材としても適しています。
今回の制作過程が、これから風景画に取り組む際の一つの参考になれば幸いです。みなさんも水彩画を楽しんでください。
では、、、また。

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みなさんこんにちは。水彩画たのしんでいらっしゃいますか。
滋賀県近江八幡市にある八幡堀(はちまんぼり)は、四季折々の美しさを見せる風景として知られています。“絵になる風景”があって、絵を描く人も多くいらっしゃいます。
今回は、新緑の木々が水面にやわらかく影を落とす印象的な一場面を描きました。
本記事では、この作品の制作過程を通して、風景画における構図の考え方や、透明水彩ならではのにじみや光の表現について解説します。
透明水彩で風景を描いてみたい方の参考になれば幸いです。