今回は、水彩画を始めたばかりのとき、誰もが最初にぶつかる壁「絵の具の塗り方」という基本中の基本について、じっくりとお話しします。
水彩画は、絵の具を「筆で運んで水彩紙の上に置く」ことで形づくられます。
「筆」という道具を使うこの方法は、色鉛筆画と決定的に違う表現方法です。
筆そのものにも幾つかの「種類」がありますし、筆の「使い方」次第で、紙の上に表されるものが全く異なるので、初心者のかたにとって「幅」がありすぎて、とても悩ましいものだと思います。
例えば、思ったように色が広がらない、あるいは色が混ざりすぎて濁ってしまう……そんな悩みはありませんか?
実は、水彩画の塗り方には基本となるいくつかの「型」があります。
この塗り方を使い分けるだけで失敗が減り、あなたの作品は見違えるほど透明感と深みを増します。
この記事では、初心者の方が今日から実践できる基本の塗り方と、失敗を防ぐためのコツを詳しく解説します。
水彩画がもっと楽しくなる!基本の塗り方を知るべき理由
透明水彩画の最大の魅力は、水の力を借りた「透明感」と「偶然の美しさ」にあります。
しかし、紙の上にただ闇雲に絵の具を置くだけでは、水彩画の良さを引き出すことができません。
基本のテクニックを知ることで、自分のイメージ通りに色をコントロールできるようになります。
僕が水彩画を始めた頃は、ただ「色を筆で塗る」ということしか知りませんでした。ひたすら「下描きした箇所に決めた色を塗ること」に腐心していました。
まあ、筆で色を単に置くだけでも絵の具をコントロールしていることにはなるのですが、まるで「子供が描くような絵」になってしまって、残念な気持ちになっていたものです。
しかし、この「コントロール」にも色々なやり方があることを後に知り、それを知ってからは表現の幅が増え、だんだんと自分のイメージ通りの絵が描けるようになっていきました。
- 水彩画における「水のコントロール」の重要性
- 表現したいイメージに合わせた技法の選び方

【基本】水彩画の絵の具の塗り方5つのテクニック
1. ムラなく仕上げる「平塗り(ウォッシュ)」
平塗りは、広い面積を均一な濃さで塗る最も基本的な技法です。晴れ渡った空や背景など、ムラなくきれいに見せたい場所で使います。
僕は平塗りするとき、大きめの平筆か刷毛を使います。広い面をムラなく塗るのにいちばん適しているからです。
例えば空を塗るときでしたら、画面の上の左端から右端に向かって色を塗り、右端に届いたら、そこから少し下の部分を、今度は右端から左端へ向けて色を塗ります。簡単にいうと左右いっぱいに筆を走らせながら徐々に下の方へ移動するといった塗り方です。
必ずしも左右に行ったり来たりしなくても良いですが、左右の幅いっぱいいっぱいに淀みなく筆を動かすとムラが少なくできます。
平塗りのコツは、大きいサイズの筆にたっぷりの水分で溶いた絵の具を含ませ、乾かないうちに一気に塗り進めることです。
広い面はムラが目立つので、絵の具を塗る前に予め水を塗っておくと、絵の具の広がりがスムーズでムラになりにくいです。
2. 色を馴染ませる「ぼかし・グラデーション」
色が少しずつ淡くなっていく、あるいは別の色に変化していくのがグラデーションです。水彩画らしい柔らかい雰囲気を出すのに欠かせません。
グラデーションを上手くするためには予め水を塗っておくと良いのですが、その水もあまりムラのないように塗っておくのがコツです。
と言うのも、グラデーションはだんだんと絵の具が薄くなる塗り方で、塗り進めるうちに筆に含まれる絵の具の量に対して、相対的に紙の水の量が多くなり、絵の具が薄められることで色が薄くなる技法だからです。
なので、水の量が各場所で異なってしまうと、薄められ具合がバラついて、キレイなグラデーションにならない可能性があります。
そして、画面の下に行くにつれて薄いグラデーションにしたいのなら、画面の手前側の高さが少し低くなるように斜めに設定して画面の上側から塗り始めます。
また、予め塗る水も、先ほどの平塗りのところで説明したように、画面いっぱいに筆を走らせながら均一に塗りましょう。
また、「補色同士の二色」でグラデーションを塗る場合は、一色目のグラデーションが乾いてから二色目を塗ると失敗が少ないです。一色目が乾かない内に二色目を塗ると、混じるところで色が濁るからです。
類似色同士の二色なら、乾かないうちに二色目を塗るのが良いでしょう。

3. 豊かな表情を作る「ウェット・イン・ウェット(にじみ)」
紙が濡れているうちに新しい色を置く技法です。色が自然に広がり、幻想的な「にじみ」が生まれます。
にじみは、いろいろな場面で活躍する技法で、これを使わない水彩画はほとんど無いといっても過言ではありません。
よく使われるモチーフとしては草花や雲などです。静物画の花の花弁の中の「じわっ」とした色の変化や、遠景の草むらや雲を表現するのに欠かせません。
にじみは絵の具の粒子が水あるいは別の絵の具に乗って、紙の上を自然に移動していく現象ですので、人がコントロールできる範囲は限られています。
下手にコントロールしようとすると人為的になってしまい、自然感がでません。
絵の具の濃さと紙の湿り具合で、にじみに差が出ます。この加減を体得するには、何度か試し塗りをして体得するのが近道です。
4. 深みを出す「重ね塗り(ウェット・オン・ドライ)」
下の色が完全に乾いてから、上の色を重ねる技法です。水彩画において「色を混ぜる」ことについては、二種類のやり方があります。
- 混色:パレットや水彩紙の上で、色を混ぜる方法。
- 重色:紙に塗った色が乾いた上に、別の色を塗る方法。
透明水彩絵の具は透明で下の色が透過して見えることを利用した「透明水彩画ならでは」の塗り方が「重色」です。
また、先に塗った色目を修正したいと思った場合に、あとから違う色を塗ることで、自分の目的の色に修正することもできます。
これら二つの塗り方による色の見え方は微妙に差が出ますので、使い分けるのがよいでしょう。
5. 質感を出す「ドライブラシ(擦れ)」
水分の少ない筆で、紙の表面の凹凸をなぞるように塗る技法です。水面の漣(さざなみ)や、木の幹のザラザラした質感、動物の毛並みなどを表現するのに最適です。
僕は、石や岩のザラザラした質感や樹の木肌の質感を出すのにドライブラシを使うことが多いです。また、比較的遠景の水面の漣を表現する時も便利な技法です。
筆に含ませる絵の具は濃いめでも薄めでもよいですが、量は少なめにしてください。
ドライブラシのコツは、筆の水分をティッシュなどで徹底的に取ることです。
より簡単にドライブラシを行うには、筆を寝かせて筆の「腹」で水彩紙表面を軽く擦るように塗ると良いです。僕は面相筆を多用していますが、面相筆は筆の腹が広いので非常に使い勝手が良いです。
こうすれば水彩紙のテクスチャーの「溝」に絵の具が入りにくく、表面の「山」だけに色が乗るため、「かすれ」が簡単にできます。
また、水彩紙の粗さも中目~粗めを選ぶと、より効果的です。












表現に深みを出す「混色」と「重色」の使い分け
水彩画には「混色」と「重色」の2通りの色の作り方があるのは前述の通りです。
悪い意味ではなく、混色は色が濁りやすく、重色は透明感を保ちながら複雑な色味を作れるという特徴があります。
重色は、先に塗った色が溶け出さないように完全に乾かしたあとに塗ります。自然乾燥で先に塗った色を乾かすのがベストですが、急ぐ場合はドライヤーを使っても良いでしょう。
ただし、ドライヤーで乾かした場合は自然乾燥に比べると色が取れやすい傾向があります。
あるいは、ホルベイン社などが提供している「フィキサチーフ」をスプレーして定着させたあとに重色するのも手です。
僕は重色を、主に絵の仕上げに活用しています。絵の最終段階で、画面全体の色目や一体感のバランスを調整する必要があるとき、絵の中の構成物の境目を無視して一気に色を掛けることがあります。
薄めに作った色を平筆や刷毛でバサっと重ねることで、それまでバラバラだった構成物同士が一体的に馴染み、画面に落ち着きが生まれます。
水彩画の不思議な現象「バックラン」を味方につける
塗った絵の具が乾き始めた頃に、水滴が落ちてカリフラワーのような模様ができる現象を「バックラン(水戻り)」と呼びます。
意図しないバックランは失敗に見えますが、背景の質感や植物の表情を出すための強力な武器にもなります。
「この絵面、ちょっと退屈だな」と思ったとき、わざと絵を「汚し」たり「賑わせ」たりするためにこれを使います。
紙が湿っているときに、筆に水を含ませて画面に向けて「ピッ」と水滴を振りかけるのです。
すると水滴の箇所にバックランが現れ、いかにも水彩画らしい「ゆらぎ」のある表現になります。
初心者が失敗しやすい「水の量」と「筆使い」のコツ
絵の具と水の黄金比は?
水彩画で最も難しい「水の量」の調節。傾向としては、水の少ない順に以下のようになると考えています。
(水:少)ドライブラシ < にじみ < 通常の塗り方(平塗りなど) < 重色(水:多)
にじみは少し「ねっとり」した感じで、通常は「さらさら」した感じの溶き方で塗ると良いでしょう。
筆は「水を操る道具」
筆の役割は色を塗るだけではありません。紙の上の余分な絵の具を吸い取ったりする「スポイト」のような役割も果たします。
そもそも、紙の上に塗る直前の筆に含ませる絵の具は、パレットの縁でしごいたり、布巾やティッシュに触れさせたりして、その量を適切に調整します。
しかし、ときに筆の絵の具の量が多過ぎるときもあります。
そうやって、もし色がはみ出したり、余計なにじみができたりしても、水分の少ない筆でそっと触れてあげれば、余分な絵の具を吸い上げてくれます(リフティング)。
ティッシュでは難しい繊細な修正も、筆を使ったリフティングなら可能です。
筆運びの正しいリズム
透明水彩絵の具がいちばん美しい発色を示すのは「初塗り(しょぬり)」です。何度も同じ場所を筆で擦ると、絵の具が汚くなり、紙の表面を傷めてしまいます。
筆を紙にぎゅっと押し付けて引きずるように塗るのではなく、スキップするようなリズム感を持って運筆しましょう。
そして、迷いなく筆を動かすことが透明感を保つ秘訣です。
【実践】水彩画の塗り方を試してみた感想と注意点
初心者が特に難しいと感じたポイント
僕は初心者のころ、下描きした鉛筆の境界線で律儀に色を換えて塗っていました。
すると、境界線で絵の具の色目がガラッと変わる描き方になって、一体感が無くなるような絵になった経験があります。
また、下描き線の境界で違う絵の具同士がふれてしまい、両方の絵の具が混じって汚い色になったこともあります。
また、紙の波打ちによる水たまりや色ムラも多々ありましたが、当時は「水彩画ってこんなもんだろ」と諦めていたものです。
これを意識するだけで劇的に変わった「一工夫」
子供っぽい絵から抜け出したキッカケは、「水張り」と「下塗り」を取り入れたことです。
- 水張り:水彩紙を板に貼り付けて波打ちを防ぐ方法。
- 下塗り:全体の色を塗る前に、薄い色で画面全体の色調や明暗を決めること。
この工程を大切にすることで、絵の一体感が出て、光を感じさせる表現ができるようになります。
水張りについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
☞『【水彩画 水張り】初心者でも失敗しない水張りのやり方完全ガイド』

水彩画の塗り方に関するよくある質問(FAQ)
A:水彩絵の具は乾燥すると色が明るくなります。パレットの上で「少し濃いかな?」と思うくらいで塗るのがコツです。
A:最初は百均などの手軽な紙でも構いませんが、紙の質によって「リフトのしやすさ」や「発色」は確実に異なります。徐々に自分の好みに合う性質の紙を探していくのが楽しいですよ。
まとめ:基本をマスターして自分らしい水彩画を描こう
水彩画の塗り方は、一度にすべてを完璧にする必要はありません。
まずは「平塗り」や「にじみ」、「ドライブラシ」を一つずつ試して、その変化を楽しんでみてください。
- 5つの基本技法(平塗り・ぼかし・にじみ・重色・ドライブラシ)を使い分ける
- 水の量をパレットで丁寧に調整する
- 「初塗り」を大切に、リズムよく筆を動かす
水彩画は、誰でも描けます。小中学生のときに触れたあの延長で考えれば良いのです。
あなたは今、あのとき知らなかった「技法」という武器を手に入れました。さあ、筆をとって紙に何か描いてみましょう。
一本の線でも、一つの点でも構いません。描いてみれば、きっと次の何かも描きたくなっているはずです。
「習うより慣れろ」です。まずは水彩絵の具と仲良くなることから始めてください。
では、、、また。

_iOS-scaled.jpg)

-485x364.jpg)




-485x366.jpg)

-485x370.jpg)
こんにちは、Bakkyです 水彩画たのしんでますか?