水彩画のにじみとぼかし|初心者が失敗しやすい理由とリカバリー方法

 この記事は、動画部分を除いて凡そ20分で読めます

みなさんこんにちは

水彩画たのしんでいらっしゃいますか?

今回は水彩画技法で初心者のかたが苦労される「にじみ」と「ぼかし」について解説します。

はじめに

 水彩画の魅力のひとつは、水と絵の具が自然に混ざり合う 「にじみ」や「ぼかし」 の表現です。

しかし、描き始めたばかりの頃は

・どんな場面で使うのかわからない

・思ったように“にじみ”ができない(“にじみ”が広がり過ぎる、または“にじみ”にならない)

・ぼかしができず、エッジ(絵の具が塗られたところとそうでないところの境目がハッキリすること)ができてしまう

といった疑問や失敗を経験することが多いのではないでしょうか。

僕も、水彩を始めた頃はこの「にじみ」と「ぼかし」の扱いにかなり苦労しました。

この記事では、初心者がつまずきやすい にじみとぼかしの失敗例と、そのリカバリー方法を紹介します。

なお、水彩画の基本については、こちらの記事で詳しく解説しています。
 ☞『【初心者必見】水彩画の始め方|道具・絵の具・紙・描き方を総合解説』

水彩画における「にじみ」と「ぼかし」とは

ここで、まず基礎を軽く整理します

実を言うと「にじみ」と「ぼかし」の定義は曖昧なのです

にじみとは

「にじみ」とは、濡れた紙の上で水に乗って絵の具が自然に広がる現象のことです。あるいは、先に塗った絵の具に後から別の絵の具を載せた時に、両方の色が混じり合って、その境目がなくなること(注)です。

(注)先に塗った絵の具の濃度が濃く、後に塗った絵の具の濃度が薄い場合には、薄い絵の具が濃い絵の具に広がり、「バックラン」や「カリフラワー」と呼ばれる現象が起き、境目がハッキリと現れます。人によっては、この現象を「にじみ」と呼ぶ人もいらっしゃいますが、当記事では、この現象は除いて説明します。

ご参考

 前出の「カリフラワー」の動画を撮りましたので参考にされてください。この技法も水彩画で使います。

ぼかしとは

 「ぼかし」とは、色の境目をやわらかくする技法のことです。より具体的には、塗った絵の具が乾かない内に、ぼかしたい箇所の絵の具を別の綺麗な水筆で拭ってやることです。

「境目をなくす」という意味では「にじみ」も「ぼかし」も共通していますが、上記のように、「にじみ」に比べて「ぼかし」の方が意図的に制御できる、ということがわかります。言い換えると、「にじみ」は「ぼかし」に比べて「なりゆき的」なのです。

「なりゆき的」とは言っても何度か経験すると、どの辺までにじむかも凡そ見当がつくようになります。

このあと説明しますので、ぜひご覧ください。

「にじみ」や「ぼかし」が登場するモチーフ

にじみは自然物・空気感・偶然性を表す場面でよく使われます。

ぼかしは境界をやわらかくしたいところや光の筋を作りたい場面で使います。

「にじみ」がよく使われるモチーフ

 夕焼け空のグラデーション雲のひろがりでよく使われます。

・夕焼けや朝焼け

・雲と空の境

 花は、にじみを使った繊細な着色をすると雰囲気がでます。

 ・バラ、チューリップ、パンジー etc.

霧・霞・遠景の山

 遠景の空気感を出すときにグラデーションとして使われます。

 ・遠景の山

 ・朝霧

紙の上での混色

 紙の上で違う色の絵の具を混ぜると水彩画独特の明るさを感じられます。

 ・陽に照らされる木の枝

「ぼかし」がよく使われるモチーフ

木陰から射し込む陽射し

 周囲の色目に対して薄い場所を作ると光の通り道を感じさせることができます。ぼかしというよりリフトに近いかもしれません。

遠景

 遠くの山、森、建物をぼかすことで奥行きが出ます。

 例えば、建物の影、木や電柱の影で、それぞれの対象物から離れたところの影をぼかしてやると、リアル感がでます。

背景

 主役の花の背景など。背景をぼかすことで主役が引き立ちます。

実際の適用例

ここで、実際の絵の中でどこに使われているのかを例示します

☝この作品の描き方についてはこちらの記事でも説明しています
『初心者でもかんたん!透明感ある森の風景を水彩画で描くコツ』

初心者がよく経験する「にじみ」の失敗

では次に、初心者が「にじみ」で苦労しがちなことについて説明していきます

失敗①:にじまない

原因:紙の濡らし方が足りない、または乾いたあとに着色している。

・対策:色を置く前に水彩紙をしっかりと水で濡らします。これでOK。ただし絵の具の濃さによって、にじませた時の広がり具合や色の濃さに差は出ます。また、ひょっとすると、塗った水が乾いてしまって、そのあとに色を置いているのかもしれません。空気が乾燥した日は水が乾きやすいので、紙の表面が濡れていることを確認しながら着色しましょう。画面を光に照らしてテカリの様子を見ると、濡れているかわかりやすいです。 なお、紙がテカっているのは、紙の表面にまだ相当に水がある状態です。にじみが「おいしい」ところはこれより少し時間が経って紙の中に水が適度に染みこんだ状態です。そのタイミングを間違えないようにするためには、やはり不要な紙で練習するのがよいでしょう。

失敗したときのリカバリー方法:にじみができるかどうかは、絵の具を置いた瞬間に確認できます。にじみが発生せず「しまった!」と思ったときは、直ぐにティッシュなどで今置いた絵の具を吸い取りましょう。直ぐに吸い取ってしまえば、紙にはあまり絵の具のあとは残りません。残ったとしても、水で濡らしティッシュで吸い取るといった作業を繰り返せば、ある程度は消すことができます(リフティング)。そして、改めて水を塗り直してトライしましょう。

失敗②:にじみが広がりすぎる

原因:「紙の濡らしすぎ」か「絵の具が薄すぎ」

対策:紙がもう少し乾くのを待って色を置くか、絵の具の濃さを濃くしましょう。

失敗したときのリカバリー方法:にじみが広がり過ぎるかどうかも、絵の具を置いた瞬間に確認できます。にじみの広がる勢いが強すぎると思ったときは、直ぐにティッシュなどで今置いた絵の具を吸い取りましょう。この場合は絵の具が薄い状態ですから、直ぐに吸い取ってしまえば、紙にはあまり絵の具のあとは残りません。そして、改めて絵の具を濃くして水を塗り直してトライしましょう。また、広がる勢いが強くないが想定範囲からオーバーしそうになったら、ティッシュで広がりそうな部分を押さえる、というやり方もあります。ただ、そうすると押さえた箇所に絵の具のエッジが立つことが多いです。なのでエッジを立てたくない場合は、後ほど説明する「ぼかし」で対応することも選択肢です。

☟にじみの大きさが変わる理由については以下の動画をごらんください。

失敗③:にじみが思った方向に広がらない

原因:狙いの場所以外にも水で濡らしてしまっている

対策:基本的に、にじみは紙の濡れた場所へと広がっていきます。なので、広げたい部分にだけ水を塗って塗らしておくことです。水は透明で塗った範囲が見えにくいので、光に照らしてテカりを見ながら注意して塗ってください。

☟にじませたい範囲の限定する様子については以下の動画をご覧ください。

失敗したときのリカバリー方法:にじまないのが分かったら、それは、にじませる予定だった部分の紙が濡れてない証拠です。その場合は、水を付けた筆を本来にじませたい方角の遠くから近づけるようにして紙を濡らしてやります。すると、新たに濡らした方向へにじんでくれます。また、コントロールが難しく広い範囲のにじみなら対応できるやり方ですが、水スプレーを吹き付けてやると、にじみが再開します。

初心者がよく経験する「ぼかし」の失敗

次に、初心者が「ぼかし」で苦労しがちなことについて説明していきます

失敗①:ぼかしにならずエッジが立つ

原因:塗った絵の具を拭う水筆の水分が少ない拭うまでの時間が長い

対策:まず、ぼかしのやり方について整理しておきましょう。ぼかしは、先に塗った絵の具のぼかしたい部分の絵の具を、綺麗な筆に水を含ませて拭うことで行います。このことで、ぼかしたい部分の絵の具が紙の上から取り除かれて、端をぼんやりさせることができるのです。なので、取り除く絵の具をどう上手く行うかがキモになります。このためには、拭う筆に適当な量の水を含ませて拭います。より具体的には、拭う筆に水を付けたあと、ティッシュや布巾で扱いてやります。そうすると、筆の水分量が適当になります。あまり力任せに扱かない方がよいです。エッジを立てないようにするためには、塗った絵の具を適当な水分を含んだ水筆で素早く拭ってやることです。

失敗したときのリカバリー方法:ぼかしは水筆で一度拭えばよいのですが、もし、一度拭ってもエッジができるようなら、二度三度と拭ってもよいです。それでもエッジが残るようなら、通常のリフトのようにエッジ部分を水で濡らしてエッジがなくなるまで、丁寧にリフトを繰り返します。

失敗②:筆跡が残ったりムラになる

原因:拭う筆の大きさが不十分か、拭う方向が間違っている

対策:十分な大きさの丸筆を使うのがよいです。そして、ぼかしたい部分の方向からぼかしたくない部分の方向へ向けて水筆を払って拭います(多少、角度がついても構いません)。逆の方向ですと拭いきる前に、ぼかしたくない部分の絵の具が水筆に沢山付着してしまい、ぼかしになりません。

失敗したときのリカバリー方法:拭う方向を間違わないようにするのが一番ですが、もし逆方向に拭ってしまったら、すかさず水筆を洗って付着した絵の具を落とし、再度ティッシュや布巾で扱いて、ぼかしたい部分を正しい方向に払って拭います。

☟ぼかしのやり方と失敗のリカバリー方法については以下の動画をご覧ください。

私が初心者の頃に意識していたこと

にじみとぼかしは、”水彩画ならでは”の技法で、とても素敵な効果をもたらしてくれるのですが、にじみは水に絵の具を乗せて運ぶ技法なので、やはり慣れが必要になります。また、ぼかしはスピードが大切になります。初心者のころ僕なりに意識していたことが参考になるかもと思いましたので、以下に列挙します。

にじみで意識すること

紙の湿り気と絵の具の濃さを注意

 にじみは紙が湿ってないと出来ませんので、絵の具を置く前に、まず紙がちゃんと湿っているかを必ず確認するようにしていました。光に当てて確認しても良いし、指先で紙の表面にちょいちょいと触れて確認してもよいです(ただし、綺麗な指で)。

焦って絵の具を置かないようにします

 紙が濡れていることは、にじみに必須ですが、濡れ具合を常々注意していました。紙の上が”洪水”ですと、想定外に絵の具が「ばーっと」広がってしまいます。例えば、静かな池の水面に映った木の幹をにじみで描こうとしたとき、先に塗った水の量が多すぎて、絵の具を置いたところ、絵の具が水に載って広がり過ぎ、とても木の幹が映り込んだ陰影とは思えないものになってしまったことがありました。こんな失敗をしないように、紙の湿り気が適度になるまで待ってから絵の具を置くようにします。今でも、焦って絵の具を置かないよう自分に言い聞かせています。

触りすぎないこと

 にじみは、紙の上の水に絵の具が乗って動くままにしておく技法です。自然の物理現象を利用した技法です。人の筆で、同じ効果を出すのは至難の技です。なので、にじみが進んで、それが自分の思い通りにならなそうであっても、焦って筆やティッシュで触らないようにしたいです。多少、自分の思った通りのにじみの場所や濃さでなかったとしても、自然ににじむに任せるのが一番キレイなにじみになります。

ぼかしで意識すること

ぼやぼやしないこと

 水彩のぼかしは、絵の具が乾かないうちに行うのが鉄則ですので、絵の具が乾く前に速やかに作業を行うことです。このためには、作業を行う前に必要物がちゃんと手にできるように準備することが大切です。つまり、絵の具を塗る筆と、絵の具を拭い取る水筆水筆の水分を扱くティッシュ綺麗な水を予め準備することです。なにしろスピードが大切なので。

季節による紙の乾き具合のちがいに注意

 梅雨時は湿度が高く、春先は乾燥した日が続きます。それぞれ絵を描く環境によって紙の乾く速度が異なるので、その場その場で気をつけます。 

まとめ

 「にじみ」と「ぼかし」は、最初は扱いが難しく感じるかもしれません。

でも、次のポイントを意識することで失敗を減らすことができます。

にじみ

・紙の上の水の量と絵の具の濃さをコントロールする

・いじりすぎない

・紙が乾くタイミングに注意する

ぼかし

・絵の具を置く前にぼかしに使う道具を手元に揃えておく

・絵の具を置いたらできるだけ速やかに水筆で払う

・水筆で絵の具を払う方向を注意する

 水彩画は、水の動きによって思いがけない表現が生まれる画材でもあります。

最初は思い通りにならないこともありますが、経験を重ねることで少しずつコントロールできるようになります。

それに、、、「思いがけない表現」も楽しめるようになります。

水彩ならではの魅力として楽しみながら練習してみてください。

では、、、また。