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いま、ここをお読み下さっているあなたは、きっと水彩画に興味をお持ちなのだと思います。
そして
・「絵を描きたいけれど、水彩画っていったい何?」
・「水彩画を描くには道具は何を揃えたらイイの?」
・「水彩画は知ってるけれど、どうやって描いたら上手く描けるの?」
・・・といったハテナマークが頭の中をグルグル回っているのかもしれませんね?
今回は、そんな水彩画の世界をチラっと覗いてくださったあなたのために、水彩画の耳より情報をお伝えします。
僕も初めは「絵のド素人」でした。 美術系大学もアートスクールにも通ったこともなく。。。普通のサラリーマンでした。
でも、あるとき唐突に絵が描きたくなって、、、始めたのが水彩画です。
いまでは、水彩画で自分なりの表現ができるまでになりました。
もしよろしければ、トップページから「ギャラリー」をご覧いただければ幸いです。
この記事を読んでくださっているあなたにも、水彩画を上手に描けるようになっていただきたいです。
僕の水彩画の知識や、市販の絵画本には書かれていないノウハウも、記事で残さずオープンにしようと思っています。
それらを知れば、きっと、あなたも上手くなれます♪
僕もまだまだ「道半ば」と思ってます。
いっしょに上手になりましょう♪
・「水彩画の特徴と水彩画の良い点」がわかります。
・水彩画を始めるために準備することがわかります。
・水彩画を上手く描くために注意するポイントとコツがわかります。
はじめに(水彩画の魅力とは)

水彩画をこれから始めてみようという方へ、まずは水彩画について大まかに説明さしあげようと思います
道具のことや描き方全体をざっくりと説明した内容なので、すでに描き始められたかたも、小学生のとき以来だ!というかたも、肩の力を抜いてお読みくださると嬉しいです
水彩画ってどんな絵?
水彩画は水彩絵具を水で溶き、溶いた絵の具を筆でとって紙に塗る描画方法です。水彩画という描画方法の最大の特徴の一つは、その透明感と繊細で柔らかな色です。
絵の具を薄く塗ることで下地の色や紙の質感を透かして明るく感じさせ、色を重ね合わせることで深みを感じさせるといった表現ができます。
この色の重なり合いによって、微妙な色の変化やグラデーションが生まれ、絵に奥行きと立体感を持たせることができます。
さらに、薄い層を何度も重ねることで、色の透明感を保ちながら濃淡をつけることができ、繊細で柔らかな表現が可能です。
花や風景、人物の肌の表現など、柔らかさや透明感が求められるモチーフに特に適しています。
僕自身、優しい感じの絵が好きなので、水彩絵の具の透明感と柔らかな色調の良さを利用して彩色をしています。
一方、濃く盛り上げるように塗ったり、何度も重ね塗りすることで、まるで油絵のような重厚な絵にすることもできます。
このように水彩画は描き手によって絵を本当に自由自在に表現することができます。
水彩画ならではの透明感と「にじみ」や「ぼかし」の美しさ
水彩技法を一言で表現すると「絵の具と水のコントロール」ということができると思います。
水に溶かした絵の具を紙の上に置くと、絵の具は水に乗って紙のいろいろな場所に広がっていきます。
そして、絵の具が紙の上のある場所で動かなくなることで色が固定されます。
その過程で紙の一部に「光り」が感じられたり、「にじみ」や「ぼかし」ができるんです。
この意味で水彩画の着彩は、やや「成行き的」なのですが、この偶然による表現も、水彩画ならではの魅力だと思います。
初心者にもやさしい!取りかかりやすい水彩アートの世界
多くの人にとって水彩画の利点は、速乾性と軽量性と経済性と取扱い易さにあります。

水彩画はめっちゃお手軽に始められるんです お財布にもやさしいです♪
まず水彩絵具の速乾性は、とっても大きな利点です。
どうしてか?っていうと、水分が蒸発する速度が油絵などに比べ速いため、比較的短時間で作品を完成させることができるから。
もし大急ぎで制作する必要があるなら、ヘヤードライヤーで乾かしながら進めればかなり時短できます。
乾くのを待つストレスが無いって、めっちゃ大きいんです。
また水彩絵具や道具は軽量でコンパクトなので、持ち運びも簡単です。
外出先でも気軽に絵を描くことができます。
例えば、旅行中に見た風景をその場でスケッチしたり、自然の中での絵画セッションを楽しんだりできるんです。
さらに、必要な道具が少ないので、準備や後片付けも手軽で、どこでもすぐに絵を始められます。
余談ですが、僕は菓子のプラスチックケースを改造して、パレットにしています。
中に仕切りを作って赤青黄の絵の具を入れておけばパレットのできあがり♪
水筆(柄の所に水を入れられ、穂の部分から水がしみ出す)とスケッチブックと共に出かけ、出先でスケッチを楽しみます。
屋外スケッチは部屋で描くのとはまた違った楽しさがあります。

写真は、僕の携帯用スケッチセットです。
左上が菓子箱を改造したパレット、その下がカードを切り抜いて作ったゲージ
その右が水筆、右端がスケッチブック(ポストカード大)に描いた絵です。

全部持ってもポケットに入る大きさなので、とても便利です^^
水彩絵具は比較的安価で長持ちし、薄く伸びるので、一度に広い面積をカバーでき、コスパ良好です。
そして、これらの利点に加えて、取扱い易さが一番の利点かもしれません。
水を含んだ筆で絵の具をぱっと触れば、すぐに描けますし、手についても洗えばすぐに取れます。
パレットの上で乾いてしまっても、湿らせれば、すぐに復活しますので、特段の管理の手間も要りません。
なので初心者でも手軽に始めやすく、コストを抑えながら絵を楽しむことができます。
まず基本的なセットから始めて、必要に応じて少しずつ追加していって、無駄なく揃えるとよいでしょう。
まず必要な道具をそろえよう

初めて水彩画に取り組まれるかたに、おすすめの道具について解説します
既に道具をお持ちの方も参考までにお読みください
基本の水彩絵の具たち
さきほど説明したように、水彩画は筆と数色の絵の具があれば、とりあえず始めることができます。
基本色の赤色と青色と黄色があれば、すべての色が作れますからね。

現に三色の絵の具だけで制作している作家さんもいらっしゃいますよ
とは言え、やはり絵の具によって、色目や透明度合いや紙への定着のし易さが様々です。
また、いろいろな筆を使うのも水彩画の楽しい点だと思いますし、表現の幅がひろがります。
道具の選び方について以下にお話しします。
筆の種類と使い分け

まず筆について。
写真にあるように、僕はいくつかの筆を使い分けています。
左から、刷毛、平筆、丸筆、面相筆大、面相筆小、割れ筆です。
筆を選ぶ基準は、材質と形と大きさですね。
まず、材質としては天然毛か人工毛、それにこれらの混毛に分かれます。
天然毛は、リスやコリンスキーやイタチなどの哺乳類の毛でできたものです。
天然毛は高価ですが水含みが良く、筆先がまとまりやすいです。
人工毛は、ナイロンが代表的な材質です。
人工毛は安価で弾力性や耐久性もありますのでコスパ良いです。
混毛は天然毛と人工毛のいいとこ取りです。
「筆は消耗品」との捉え方で支障ないと僕は考えています。
なので、筆に多くのお金を使わなくてもよいと思います。 僕は人工毛の筆もたくさん使っています。
次に大きさです。
これを考える際、ご自身の絵画スタイルを考えるとよいでしょう。
より具体的には、描きたい絵のサイズや絵のテイストを考えると良いです。
あなたの描きたい絵のサイズはどれくらいでしょうか?
F0サイズ(185×142mm)でしょうか?
F6サイズ(407×320mm)でしょうか?
それとも、もっと大きいものでしょうか?
小さいスペースに絵を描く場合や緻密な絵を描くスタイルの場合は、比較的細い筆だけで済ませられます。
一方、広いスペースに絵を描く場合や大まかな太いタッチで描く場合は、それなりに大きい筆(刷毛を含む)が必要ですね。
大きめ(6~12号)の筆では広い空の部分や背景部分や下塗りに使用します。
中くらい(4~6号)の筆では、メインの描写に使用します。
小さめ(0~2号)の筆では細部の模写や仕上げに使用します。
次は形です。形は用途によって使い分けます。
僕は丸筆、平筆、面相筆を主に使用して制作しています。
丸筆は、皆さんも小学校の図画の時間にも使ったと思いますが、断面が丸く先端に向かって細くなって尖っている筆です。
線描きや細かい部分の描画に適していて、広い面の塗りも可能な筆です。

平筆は断面が平たく正面から見ると四角い筆です。広い面の塗りや、直線的でシャープなエッジを表現できます。
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面相筆は丸筆よりもさらに細く、細長い線を表現できる筆です。
元々は日本画用の筆で、人や動物の表情(面相)を表現するための筆なのでこの名前があります。
筆の毛が長く、案外コシもあります。画面に対して筆を寝かせて、筆の腹で彩色をすることもでき、表現できる幅は広いです。
僕の絵では一番活躍している筆です。
絵の習い始めは、いろいろな筆で試しながら描くとよいと思います。
そのうち、自分の絵のスタイルに合ったお気に入りの筆ができ、自然にたくさん使用するようになると思います。
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次に刷毛です。
水彩画は水を多く使用するので、そのままでは濡れた紙が波打ってしまいます。
これを避けるために、「水張り」という作業をしてから絵の制作に入ります。
このとき、紙の裏の全面に水を張る作業をしますが、このときに使うのが刷毛です。
もちろん、刷毛は水張り以外に広い面を彩色する際にも使用します。

まとめると
とりあえずは丸筆を大中小の3本、平筆を1本、面相筆を1本、刷毛を1本揃えれば大丈夫でしょう。
これだけあれば、基本的な水彩技法はひととおりカバーできます。
ちなみに、僕も水彩画の習い始めに沢山の筆を購入したのですが、日頃の制作に登場するのは少ないです。
刷毛1本か平筆の大1本、面相筆の大1本と小1本の筆です。
参考までに、僕は主にF6サイズの水彩画を制作しています。

色々な筆を使って、特性や表現できることの違いを感じることが大切だと思います。
水彩紙の特徴と選び方(コットン紙・パルプ紙など)
次に水彩紙について。
水彩紙は、水彩画の仕上がりや描き心地に大きな影響を与えます。
ここでは、水彩紙の素材・厚さ・表面の質感に注目しながら、それぞれの特徴と選び方を解説します。
水彩画用紙には、主にコットン紙とパルプ紙の2種類があります。
コットン紙の特徴は以下の通りです。
・高級水彩紙に多く使われ高価(特にアルシュなどのブランド紙)
・吸水性・発色・耐久性に優れ、絵具のにじみやぼかしが美しく出せる
・紙がヨレにくく、重ね塗りや修正にも強い
・長期間の保存にも耐える
・高価(特にアルシュなどのブランド)

パルプ紙の特徴は以下の通りです。
・コットンより安価(アルビレオ、ヴィフアールなど)
・紙質はやや硬く、吸水性も低め
・練習用やラフスケッチにぴったり
・発色はやや鮮やかに出やすい
・水に弱く、波打ちやすい
・塗り重ねに耐えられないことがある
・色ムラが出やすい

上記のように、練習量を多くしたい人は安価なパルプ紙が良いと思います。
また、水彩用紙の厚みも重要なファクターです。
水彩紙は、g/m²(グラム毎平方メートル)で厚さが表記されます。
190g前後のものが一番薄く、400g以上のものが厚く強いです。 薄いものは、水を多く使うと波打ちし易いですが安価です。
厚いものは、強くて伸びにくく波打ちし難いです。
水彩画ではマスキング技法もよく使います。
紙にマスキング液を塗っておき、その上から彩色して、最後にマスキング液を剥がします。
マスキング液を塗っていたところが着彩されずに紙の白さが残る、といった技法です。
マスキング技法では、マスキング液を剥がす必要があるので、紙が丈夫でないと画面が傷つき破れてしまうことがあります。
また、紙の絵の具を筆やティッシュで取ったりナイフで削ったりすることがありますので、水彩紙は丈夫なのがよいと思います。
なので300g以上のものを使うとよいです。
また、紙の表面の質感も絵の仕上がりに大きな影響を及ぼします。
質感は粗目と中目と細目、とに分類されます。
粗目は紙の表面がざらざらしています。このざらざら感を利用して、雰囲気のある絵作りができます。
細目は表面が紙の表面が滑らかで緻密な描写ができます。
粗目は、ざらざらの凹凸の凹の部分に絵の具が溜まりやすく、一様に塗っても細かなパターンの色の起伏が現れます。
そういうのを嫌って滑らかな仕上がりを狙うなら細めを選択しましょう。
中目は粗目と細目の中間です。
まとめると
最初の1冊にはコットン紙・中目・300gがベストバランスです。(例:ホルベイン「ウォーターフォード」やマルマン「ヴィフアール中目」)
とにかくたくさん練習したい人はコスト重視でパルプ紙・中目・190~240gを選択するのが良いでしょう。
ほかに必要な道具(パレット・水入れ・ティッシュなど)
他には、パレットと水入れが必要です。
パレットには絵の具を入れる窪み(ウェル)が多数設けられていて、ココに予め絵の具をチューブから出して乾かしておきます。
そして絵を描き始める時に水で濡らすとすぐに描き始められます。
写真は僕が使っている水入れとパレットと水スプレーです。

パレットでなく絵皿を使ってもよいですよ。
広い面を彩色する必要があって、絵の具をたくさん使うことが予めわかっているときは絵皿にたっぷりの絵の具を用意します。
絵皿は食器皿や瓶の蓋でも代用できますが、溶いた絵の具の色目がわかるように白い陶器やプラスチック製のものが良いです。
またティッシュも必要です。
筆にとった絵の具を拭き取ったり、画面の絵の具の量のコントロールをするのにティッシュは大いに役に立ちます。
筆の絵の具の拭き取りだけなら布巾でもOKです。
他には、必須ではありませんが水のスプレーボトルを用意します。
始めの方で書いたように、水彩画は「絵の具と水のコントロール」です。
なので、紙の湿り具合や場所をスプレーでコントロールすると、よりバリエーション豊かな彩色ができます。

紙の上の水分量をコントロールするために、僕はスプレーを多用しています。
他には下描きをするのに鉛筆と練り消しゴムがあると良いです。
鉛筆の濃さ(堅さ)はB、HB、Hを使います。
B側に寄るほど柔らかい芯なので、あとで彩色する前に練り消しゴムでよく消すことができ、紙面に鉛筆の跡が残りにくいです。
僕は下描きはBで、緻密・細密な描写が必要なところで、HBやHを使います。
初めてでも楽々♪ 基本の描き方を紹介
絵の道具が揃ったら、早速筆をとってみましょう。

怖がらずに 面倒くさがらずに 遊ぶような気分で
絵の具の溶き方と色の作り方
ここで、基本的な色の作り方について説明します。
まずパレット上のすべての絵の具に、満遍なく水をスプレーして湿らせておきます。
こうすると欲しい色がすぐに取り出せるので、描く時は、いつもこのようにしてください。
パレットのウェルに置いてある絵の具(例えば青)を水で濡らした筆で触れてください。
筆に青い絵の具が付着しましたね。
次に、そのまま筆の穂先をパレットの広い場所(混色部)に乗せます。
すると、混色部に筆の青い絵の具がいくらか乗ると思います。
ココまでは、最初にとった絵の具の青色がそのまま混色部に現れているはずです。
次に筆の穂先を水入れの中のキレイな水に入れて洗います。
穂先が水入れの底に届くまで水に入れてキレイにします。
次に、先ほどとは別の色(例えば赤)の絵の具に筆の穂先を触れます。
先ほどと同様、穂先に赤色の絵の具が付着したと思います。
次に、そのまま筆の穂先をパレットの広い場所(混色部)に乗せます。
すると、混色部に先ほどの青い絵の具と今回の赤い絵の具が並びました。
あるいは、もしかしたら混色部に置いてた青色の絵の具に直接に触れているかもしれません。
この2つの色を混色部でぐるぐる混ぜてみましょう。紫色に変わりましたよね?
このようにして、目あての色を混色部で作った上で、筆の穂先にしみこませて紙に下ろして描くのが基本的な彩色方法です。
パレットの上で色を混ぜる手法を動画で説明します
慣れてきたら「紙の上で混色する」こともやってみましょう。面白い色合いが楽しめますよ。
紙の上で色を混ぜる手法について動画で説明します
ところで、、、
絵の具を水で溶くとき、絵の具の濃さ(水に対する割合)に気をつけましょう。
絵の具に対して水が少ないとドロっとしたりネッチョリした感じの濃い絵の具になり、
多いとサラっとした感じの薄い絵の具になります。
濃い絵の具と薄い絵の具では、紙の上での絵の具の動き易さに差が出ます。
これは絵のテイストの差としても表れますので、常々意識するようにしてください。

絵の具の濃さは、やはり「感覚として」覚える必要がありますね ^^;
次に色の三原色について知りましょう。絵の具の基本の3色を三原色と呼びます。
赤(マゼンタ)と青(シアン)と黄(イエロー)です。
この3色を混ぜ合わせることで、すべての色が作れます。
ここで、色環のお話をします。

図画の時間に習ったかもしれませんが、色と色との関係を環で表したものを色環と言います。
色環は、色相(色の種類)を円形に並べて、色と色の関係を視覚的に表したものです。
たとえば、赤→赤橙→橙→黄橙→黄→黄緑→…というように、色が滑らかに移り変わるようになっています。
原色である赤・青・黄の周囲に、原色同士の混色による二次色を配置しています。
また、色環の中心に対して反対側にある色同士を補色と言います。 例えば赤と緑、青と橙などです。
補色の関係にある色同士は、お互いを目立たせる効果があります。
なので並べて描くと、パっとした印象的な強いコントラストを発揮させることができます。
登山列車の車体が赤系統の色で塗られているのは、山の緑と補色関係で映えるからなのです。
これに対して類似色といって、色環で隣同士の色、例えば黄・黄緑・緑などは相互になじみやすく、まとまった感じになります。
なお、水彩絵の具は混ぜていくほど濁って暗い色になり水彩絵の具の透明 感が失われます。
なので、明るい作風を目指すならできるだけ単純な混色にすることを意識した方がよいでしょう。
また、補色関係にある色同士を混ぜても濁りやすいです。
水彩画は紙の上で混色することが頻繁にあります(後述のウェット・オン・ウェット)。
その場面では混色する色相を意識して色を選んでください。
「にじみ」と「ぼかし」のテクニック
水彩画には「にじみ」と「ぼかし」という、水彩画ならではの魅力的な技法があります。
雲を描くときや比較的遠景の森の様子などによく使う技法です。
「にじみ」は、水をで湿らせた紙の上に絵の具を落とすと、じわわ~と絵の具が周囲に広がっていく現象を利用する描き方です。
自然で柔らかな雰囲気を出せるのがにじみの魅力です。
絵の具がどのように広がるかは、ある程度コントロールできますが、「成り行き」に任せるところが多いです。
難しく考えるのではなく、偶然の絵の具の広がりを楽しむくらいの感覚で描くのがよいと思います。
にじみを使うとき前述のように絵の具の濃さと、紙の上の湿り具合(さらにいえば水の量)に気をつけると良いです。
絵の具の量が水の量に比べて濃いと、にじみは少なくなりますし、逆だと多くなります。
予め、同じ紙質の水彩画用紙を別に用意しておき、いろいろな絵の具の濃さと水の量を変えて試し塗りするのをおすすめします。
「にじみ」の手法を動画で説明します
次は「ぼかし」です。
「ぼかし」は、色をなめらかに変化させたり、エッジ(絵の具が塗られている範囲の端のこと)を柔らかくする技法です。
まず筆で紙の上に色を塗ります。
次に絵の具のついてない筆に水を含ませ、指で軽く穂先を絞っておき、ぼかしたい部分をシュッと拭います。
すると拭った部分の絵の具の色が抜けて、ぼかしができます。
先に塗った絵の具が乾かないうちに別の湿った筆で素早く拭ってあげるのが大切です。
ぼかしは、にじみよりもコントロールが簡単で、自分の意思でぼかしの場所を決めることができます。
この技法も、にじみ同様に予め練習するのがよいでしょう。
「ぼかし」の手法を動画で説明します。
グラデーションのテクニック(ウェット・オン・ウェット)
「グラデーション」も水彩画の魅力的な技法の1つです。
ここでは、広い画面で空をグラデーションで描く手順を説明します。
青空を見たとき、頭上のあたりは濃い青に見え、遠く地平線の近くに向かってだんだんと薄くなっていきます。
これをグラデーションで表現すると遠近感が感じられる絵になります。やり方は次の通りです。
①水彩画用紙全体に水スプレーをして刷毛で全体に水をなじませます。
②青の絵の具をタップリ溶いておき、平筆にとり、左右に筆を動かしながら画面の上から下へと移動しながら塗っていきます。
このとき、画面の下に行くほどに筆の絵の具に対する水の量が増すので、すでにグラデーションができはじめます。
③次に同じ筆の穂先を布巾の上にちょんちょんと当てて絵の具を拭い、もう一度②と同じことをやります。
これを何度か繰り返します。
④そして水彩画用紙を縦にすると、画面の水分と絵の具が重力で下の方に動いていき全体が馴染んでいきます。
馴染んだら水平にもどします。
色目をより濃くしたい場合や色斑が出てしまった場合は、一旦、紙を乾かして、もう一度①~④を繰り返します。
グラデーションの手法を動画で説明します
線画の上に色を塗る(塗り絵感覚で楽しむ)

ここまでの説明を頑張って読んでくださってありがとうございましたmm
ここで、静物でも風景でも何でも良いので、選んだモチーフを鉛筆で下描きしたものに実際に色をつけてみましょう。
まず、お手元の水彩画用紙に下描きをしましょう。
透明水彩絵の具は文字通り透明で下の色が透けてみえますので、鉛筆の下描きはあまり濃くしない方がよいでしょう
モチーフの形がぎりぎりわかる程度の濃さで十分です。
下描きができたら、パレットを開き、絵の具に水スプレーをしてください。 塗る順番は以下の通りが基本です。
①色の薄い箇所や明るい箇所や遠景の箇所
②色の濃い箇所や近景の箇所
③最近景の箇所や絵の主人公になる箇所や陰となっている箇所
①には背景や下塗りも含まれます。②③に進むに従って、細かなところまで気を遣って描くと遠景感が出せます。
ところで、絵を始めたばかりのとき、鉛筆で描いた下描きの通りに着彩することに神経を集中したことはありませんでしたか?
だれでも小学校か幼稚園のころに塗り絵をしたことがあると思います。
そのとき、線で描かれた色と色の境界を一生懸命に気にしながら塗った経験があると思います。
けれども、塗り絵のように下描き線のところでピシッと色目を変えて塗ってしまうと、とても「堅い」感じになってしまいます。
そして、画面の中のモチーフ同士の一体感がなくなってしまいがちです。一部分が「浮いた」感じの絵になりやすいです。
形がハッキリし「安心できる絵」にはなるのですが、「面白み」や「一体感」や「ダイナミックさ」が弱い絵になりがちです。
タイトルに「塗り絵感覚で楽しむ」とあるのに矛盾するようで恐縮ですが、あまり下描きの線にこだわらなくてもよいかもしれません。
多少は線からはみだしても先に塗った色と混ざってもかまいませんので、「えいやっ!」という気持ちで塗ってください。
きっと、自由な感じが出て面白い絵になると思いますよ。
水彩画の難しさも知っておこう

難しさを知っておくことで、失敗を未然に防いだり、失敗してもリカバリーすることができます
でも慎重になりすぎないようにすることも大切だと思います
思い通りにならない絵の具との付き合い方
水彩画は一度描いた部分を修正するのが難しいことがあります。
紙と絵の具の特性上、色を消す(「色を抜く」とか「リフトする」と言います)ことがあまりできません。
なので、ミスをしたり自分の思い通りにいかなかったときに修正が上手く効かない場面があるかもしれません。
また、重ね塗りすればするほど暗い色目になってしまい、透明水彩絵の具の良い点が十分に発揮されない傾向があります。
このことから、計画的で慎重な彩色が求められることが多く、ここが初心者には難しく感じられる点かもしれません。
けれども、失敗したときにそのリカバリーに取り組むことも水彩画の上達につながります。
「失敗した!」と思ってもできるだけ最後まで絵を仕上げるよう心がけてください。
失敗しても大丈夫!練習が上達への近道です。
修正が難しいからこそ大事な「計画性」
先ほども説明さしあげたように、水彩画は失敗をリカバリーしにくい技法です。
ですので、漫然と描いていくと、「なんか思っていた絵と違う?」となりかねません。
下描きをするときから「ココをまず塗って、次にココ、最後はこの辺を塗って仕上げよう」と大まかで良いので描くシナリオを考えながら進めると良いでしょう。
ただし、色を塗っていくと、その彩色された絵を見ることによって、絵の見え方が変わることがよくあります。
その抱いた感覚に対して「次は、こう塗りたい」との思いが新たなイメージと共に頭の中に浮かんだら、その感覚に従って進むのが良いと思います。

僕はこのことを「絵と対話しながら描く」と表現しています
水彩画の上達のコツ
最後に、水彩画上達のコツを箇条書きにまとめますので、意識してみてください。これだけでも、絵がぱっと良くなります。
①.鉛筆で下描きをしてから彩色する
いきなり絵の具で描くのではなく、まず鉛筆で下書きをしてから色をつけるようにしたほうが失敗が少ないです。
下描きの段階で、構図や形の善し悪しを確認して、そのときに「良くないな」と思ったら修正してから色を塗りましょう。
色を塗り始めてからの修正は難しいですから。
②.光と影を意識する
光がどちらから当たっているかを考えて、明るいところと暗いところの明度の差をしっかりつけて塗ります。
絵に奥行きや立体感が出ます。
明るいところを、より明るく感じさせるには、暗いところを強調して、より暗くします。
影を少し入れるだけでも、絵がグッとリアルになります。
③.日常の中に描きたいものを探す
日頃、街を歩いてるときなども、風景や物を漫然と眺めるのではなく、「観察」してください。
そして、この風景や物はどう描こうか?と頭の中で描く手順を想像してみてください。
身近な花、コップ、果物、キレイな景色など、ふだん目にする「描きたいなと思うもの」を描くと楽しく続けられます。
描くモチーフに愛着があると、いい絵になりますよ。
④.他人の作品を観察して技法を盗む
上手な人の絵をよく見て、「どうやって描いているんだろう?」と考えてみましょう。
色の使い方や塗り方をマネしてみると、自分の絵にもどんどん良い変化が出てきます。
有名な作家さんの絵の展覧会に出向くだけでなく、街のギャラリーの展示作品を観るのもすごく勉強になりますよ。
また、書店の絵画の書籍コーナーに行って、自分の好みの絵を描いている作家さんの書籍を読むのも良いです。
⑤.どんどん描きましょう
最初から上手く描けることは誰にとっても難しいことです。
初めは上手く描けなくても、投げ出さずに続けることが大事です。
何枚も描くうちに、手が慣れて、目も育ってきます。
楽しく続けることが,上手くなる一番の近道です。
まとめ
水彩画は透明感や「にじみ」「ぼかし」の美しさが魅力で、初心者にも始めやすいアートです。
最低限の道具(筆・絵の具・紙)があれば始められ、持ち運びも簡単で手軽に 楽しめます。
紙や筆の種類、使い分け方を知ることで、水彩画の表現の幅がぐんと広がります。
最初の一筆は、誰にとっても少し勇気がいるものです。
でも、水彩画は「うまく描くこと」よりも「楽しむこと」が一番大切ですよ。
思いどおりにいかないにじみや偶然の混色が、あなただけの素敵な作品になります。
失敗を恐れず、気軽な気持ちで筆を動かしてみてください。
最初は線がゆがんでも、色がはみ出しても大丈夫。それもすべて水彩画の魅力です。
一歩ずつでも、続けていれば必ず上達します。
そして、描くたびに少しずつ「自分らしさ」が絵に表れてくるはず。
あなたの世界をあなたの色で自由に描いていきましょう。

あなたの最初の一枚が、絵の旅の素敵な始まりになりますように
では、また
こんにちは。水彩画家のNoriです 日曜水彩画家を始めて20年程になります
トップページのような絵を描いています