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皆さんは「水張り」という言葉をご存じでしょうか?
水彩画を始めて間もないかたは、初耳かもしれませんよね。僕も最初はそうでした。
・「水張りってなに?」
・「ひょっとして水を紙に塗ること?」
・「水彩画に必要なの?」
僕もホントに、これくらいのイメージでした(笑)。
正解は、「水彩画用紙を水で濡らして板に貼り付けること」です。
。。。と、このように説明されても、「何でわざわざ貼り付けなきゃいけないの?」と、
まだピンと来ないかもしれません。
今回は、水彩画を描くうえで、とても便利な、そして仕上がりを左右する「水張り」について、お伝えしたいと思います。
絵を描く前に、水張りをするだけで、着彩が楽になり、絵の出来も良くなります。
是非、取りいれてみてください。
・水張りが必要な理由や、水張りの利点を知ることができます。
・水張りに必要な物や水張りの具体的な方法が動画でわかります。
それではまず、そもそもなぜ“水張り”が必要なのか?というところから、一緒に見ていきましょう。
なぜ「水張り」が必要なの?

水張りをするのと、しないとでは、全くと言っていいほど描きやすさが違います
水彩紙が波打つ理由は?
皆さんは、水彩画用紙に絵の具を塗ったとき、「紙が波打って描きにくいなあ」と思ったことはありませんか?
特にタップリの水で溶いた絵の具で塗ったとき、水彩紙が派手に波打ちませんでしたか?
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👆最初はパリッとした水彩紙が・・・
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👆水に濡れると、こんな風に😅
これは、水分によって紙が伸びるからなんです。
水を含んだ紙はどうしても伸び縮みしてしまう
水彩画用紙でもコピー用紙でも、紙でできているものは水分が付くと必ず伸びてしまいます。
皆さんも、ご経験があると思います。
水彩紙は、主にコットンや木材のパルプなどから作られた繊維できています。
この繊維は、水を吸いやすい性質があります。
なので、紙に水が付くと、繊維の1本1本が水分を吸収して膨らみます。
この繊維の膨らみのため、水が付いた所だけ紙が少し伸びます。
一方、水が付いてないところは伸びません。
なので、伸びたところと伸びてないところのズレが起き、紙が波打ってしまうんですね。
やっかいなことに、繊維には向きがあって伸び具合が異なり、ますます複雑に波打ちます。
紙は乾くと再び縮むのですが、完全には元に戻らないので、波打ちやシワが残るんです。
描く途中で紙が波打つと、絵の仕上がりに影響が出ます

紙が波打ってしまうと、とても塗りにくいんです
別の記事でも説明しましたように、水彩画は「絵の具と水のコントロール」です。
紙の上で絵の具の動きをどのようにコントロールしてやるか、で色の場所が決まります。
ところが紙が波打つと、紙の上に凸凹ができてしまいます。
凸のところはすぐに乾き、凹のところはなかなか乾かず、水たまりのようになってしまいます。
なので、絵の具の偏りができ、色を均一に塗りたい場所であっても、塗りむらになって、残念なことになってしまうのです。
例えば、記事の最初でお見せしたような比較的広い画面をムラなく塗りたい絵では重要です。
水張りをすれば、「ピンと張った状態」で描けます
水張りは、先ほど説明した「濡れると伸びる→乾くと縮む」という性質を利用します。
最初に紙全体をしっかり濡らして伸ばし、
次に、伸びた状態で板にテープで固定し乾かします。
乾くにつれ水彩紙が縮んでいきます。
ところが、水彩紙の端はテープで留められてるので、四方から引っ張られた状態になります。
こうすることで、紙をピンと張った状態にしておくことができるのです。
絵の具を塗っても波打ちは最小限に止めることができ、絵の具と水のコントロールがグンとやりやすくなります。
なにより、ピンと張った紙だと下描きも着彩も、しやすいですしね。
水張りに必要な道具について解説します

水張りの効果、なんとなくイメージできましたか?
では、水張りにはどんな道具が必要なのか、順番に見ていきましょう。
水彩紙
水彩紙はどんな物でもよいです。
僕は厚さ300gのものをよく使っています。
木製パネル or 厚めの板
水張りするには、水彩紙を貼り付けるパネルが必要です。
ベニア板でもプラスチック板でもよいです。
画材店には水張り用の木製パネルが売っています。値段はサイズによります。
木製パネルですと、F4でもF6でも1,000円で十分にお釣りが出るほどで安価です。
固定するには、水張りテープ
水彩紙を板に貼り付けるのには、水張りテープを使用します。
裏面に切手の糊面のような処理がされている紙のテープです。
これも画材店にいけば、500円ほどで手に入ります。
・水を入れる容器、刷毛、ティッシュ(布巾でも可)
水彩紙に水を塗るのと、水張りテープに水を塗るのに、刷毛を用います。
また、水彩紙に水を塗るときに水彩紙の周囲に水が、はみ出ます。
この余分の水を拭き取るのにティッシュか布巾があると便利です。
「道具が揃ったところで、いよいよ実践に入っていきます。実際にどうやって紙を水で濡らし、パネルに貼るのか、順を追って解説します。
実演:基本の水張り手順

動画を交えながら、水張りの方法について解説します
まず必要な道具の説明から
必要なものは先ほど説明した物ですが、実際に現物をお見せしながら説明します。
パネルより少し小さくしておきます。水彩紙の表面と裏面とを忘れないように。
水彩紙とパネルとが微妙に近いサイズのときは、水彩紙の方を少し小さくした方がよいです。
これは、水を塗って水彩紙が伸びるのを見越してのことです。
もし、水を塗って伸ばした時にパネルより大きくなってしまうと、角部分の処理が難しいです。
最悪、角部分が盛り上がってしまいます。
そうならないように、パネルと水彩紙のサイズに応じて水彩紙の辺をカッターで切りましょう。
水彩紙の各辺の長さがパネルの各辺の長さより、3mmほど短いくらいに。
これは、F4サイズでの塩梅です。もっと大きいサイズなら、さらにサイズダウンが必要ですし、
小さいサイズなら、そんなにサイズダウンは必要ありません。
水彩紙のサイズはメーカーによって微妙に異なるのです。
一方、水彩紙より十分に広いパネルやベニア板なら、サイズを気にする必要はありません。
水張りは、水彩紙の裏面に刷毛で水をタップリ塗って、水彩紙を伸ばします。
なので、水彩紙の表と裏がどちらの面なのかを忘れないようにしなければいけません。
予め水彩紙の表と裏がどちらか、わかるように鉛筆などでマーキングしておきます。
ブロックになった水彩紙ですと、表紙を開いた時に見える面が表です。
水彩紙の裏面にタップリ水を塗り、水彩紙を十分に伸ばします
刷毛で水彩紙の中心から四方に向けて水を塗ります。
このとき水彩紙の周囲にはみ出た余分な水はティッシュか布巾で拭き取ります。
水を水彩紙に満遍なく塗ったら、しばらく待ちます。
水彩紙が十分に伸びきってしまうように、15分くらい待ちます。
もし、乾いてきたら、刷毛で水を塗り足してやります。
この待っている間に水張り用テープを所定の長さにカットしておきましょう。
水彩紙の長辺の長さより、2cm程長いテープを2本。
水彩紙の短辺の長さより、2cm程長いテープを2本。合計4本。
水彩紙をパネルに貼りつけ、水張りテープを四辺に貼ってしっかり固定します
水彩紙を裏返して(表の面を上に)パネルの辺と水彩紙の辺とが平行になるように置きます。
手の皮脂やハンドクリームは、予め洗って落としておくことをおすすめします。
水彩紙に脂分が残り、水張りが終わった後の着彩に悪影響がでますので。
水張りテープの糊の付いている面に刷毛で水をさっと塗り、水彩紙とパネルとを貼ります。
一辺に貼ったら、その反対側の辺に貼ります。
このとき、反対側の辺に向けて手の腹で紙を伸ばすようにしてやりましょう。
そして、四辺全部を貼ります。
乾燥させて完成です
自然乾燥なら数時間~半日放置しておきます。ドライヤーで時短も可能です。
水彩紙が劣化しますので天日干しは避けましょう。陰干しで。。。
よくある失敗例

以下に失敗しやすい例を解説します
僕もやらかしたクチです 反面教師にしてください
水を満遍なく塗れていない(一部、乾いていた)
水彩紙に水を塗るとき、塗り残しをしてしまい、水張りを失敗してしまうことがあります。
水は水彩紙の隅々まで満遍なく塗るようにしてください。
水が塗れてないところは伸びませんから、波打ちが起きることがあります。
水彩紙に光を当てて反射の具合を見ると、水で塗れているかどうか簡単にわかりますよ。
そして、水はタップリ塗るようにしてください。およそ15分ほどは乾かないように。
時々水を追加して、水彩紙が十分に伸びるようにしましょう。
しわができてしまった
これは、特に水彩紙のサイズがパネルより大きい場合で、角部の処理の影響が考えられます。
大きい分、水彩紙をパネルの側面に向けて折り曲げつつ、テープで留めなければなりません。
そうなると、角部から対角線に向けて膨らみができてしまうことがあります。
水彩紙の寸法は、伸びしろを見越してパネルよりもサイズダウンしておきましょう。
手水張り用テープが剥がれてしまった
これは、水張りテープの糊の付いている面への水塗りが十分でなかった場合に発生します。
刷毛で、一端側から他端側までしっかり塗らしましょう。
そして、テープの端を両手で持ってピンと張り、狙いを定めて水彩紙の辺の上に置きます。
辺の中央から両端に向け、指で紙とパネルの両方をテープを押さえていきます。
焦らずに押さえましょう。
まとめ
今回は、水彩画を描くうえでとても大切な「水張り」について、基本から手順、失敗例まで詳しくご紹介しました。
最後にポイントをおさらいしておきましょう。
水張りとは:水彩紙を濡らしてパネルに貼り、紙をピンと張る下準備
なぜ必要?:水分で紙が波打つのを防ぎ、描きやすく、美しい仕上がりになる
必要な道具:水彩紙・木製パネル・水張りテープ・刷毛・水容器・ティッシュなど
基本の手順:紙の裏に十分に水を塗り15分間かけ伸ばし、パネルにテープで固定・乾燥
これらを押さえておけば、初めてでも安心して水張りにチャレンジできますよ。
水張りをマスターすれば、グッと描きやすくなります。
ぜひあなたの作品にも活かしてみてくださいね。

いかがでしたか? 今回は水張りについて解説しました。
テープを貼るところは慣れも必要なので実際に手を動かしてやってみましょうね
では、また。。。
こんにちは 水彩画家のNoriです 日曜画家を始めて20年程になります
このような絵を描いています